異世界に転生したので人類初めての配信者になろうと思います

アルファディル

プロローグ

王都サウザンド、その一角にある酒場。そこには昼間だと言うのに多くの人で賑わっていた


そんな中、入口の扉を開き金具が軋む様な音を響かせながら入ってきたのは四人一組のパーティ


一同は辺りを見渡し左奥の壁際で不自然に空いているカウンター席へ向かう。席に座りながら腰に携えた剣を外しつつ青年がカウンターにいる筋骨隆々ないかにも店主風の男に話しかける


「こんにちわ店主、盛況みたいですね。ここの酒場はいつのこんなに盛況なんですか?」


「ん?お前さんもしかして王都に来たのは最近か?この酒場はいつもこんな感じさ、夜より昼の方が人は多いっつ〜珍しい酒場だよ。あと言っとくと俺は店主じゃねぇぞ、ついでに言っとくと店主はほとんどの時間、ここにはいねぇんだ。特に昼はな」


店主がいない酒場と店員の言い方に不思議さを感じつつもう1人の槍を背に背負っている青年が話に加わる


「へぇ、そうなのか。ここに来るまでいろんな酒場があったけどどこも閉まっててな、飯食って解散だったから、どうせなら酒飲みてぇって事で見つけたのがここだったんだよ。取り敢えず俺とこいつはシュワーで、食いもんは店員のおすすめで頼む。他2人は何が良い?」


「お酒を飲みたかったのはあんたでしょ?わたし達はご飯が食べられればそれでよかったし。私と彼女はオレンジを頂戴、たべものは一緒でいいわ」


魔法の杖を腰に付けている高身長にローブを羽織った女性が青年に対して苦言を呈しながら注文する


そんな彼女に同意を求められた軽装の女性は苦笑しながら「あははは…」と曖昧な返事を返す


「まぁ、良いじゃねぇかよ。どうせなら楽しく食いてぇしな!にしても店員さんよ、入った時から気になってたんだが、何でカウンター席に人がいなくて、逆にそこから離れた反対側のテーブル席の方が人が多いんだ?普通逆な気がするんだが」


カウンター席というのは基本的に人が埋まっている事が多い、注文したメニューが出来次第すぐ届くしわざわざ店員などを呼ぶ必要もない。にもかかわらず、カウンター席よりむしろそこから離れた反対側のテーブル席の方が人が多い。だからこその疑問だった


「そうだなぁ、ここが他の酒場と違って昼からやってるのにも繋がるんだが。答えは…っと、もうそろそろ始まるな」


と入り口から見て右側の壁へを向く様に一同を促す店員、疑問に思いながらも皆そちらを向く。するとその奥の壁に設置されている黒い長方形の箱が目に止まる、酒場に入った時には気にならなかったそれが疑問の答えなのかと見ていると唐突に動き始めた


あまり聞いた事の無い音を響かせながら長方形の箱から上に向かい伸びで行き、最終的に薄い板の様になる


あれは一体と店員に説明を求めようとすると「まぁまぁ、見ときなって」と返され視線を元に戻す


少し経つと板が…モニターが動き始めた。不規則に揺れ動いたかと思えばそこに2人の男女が現れる。周りが少し暗く岩の様なものが壁になっている事から何処かの洞窟…ダンジョンにいるのだろうと考えられた


1人は黒の短髪、動きやすい青と黒をベースとした服装にライトアーマーを装備した青年


もう1人はおよそ危険な場所ではにつかわしく無い膝丈のスカートにメイド服を着込んだ白髪の女性


そんな何処か主従を思わせる2人がこちらに向かって語りかける


『お!問題なく始められたみたいだな。酒場の皆んな、今日もダンジョン攻略やっていくから宜しくな!ライブだ」


『皆様こんにちは、今日も皆様に楽しいひと時をご提供させていただきます。ライブ様のメイド、フィリーです』


「よ!待ってました!」


「今日も何かやらかしてくれよ!」


とモニター付近のテーブル席に座っている客の声を聴きながら、いったいどの様にして自分達に話しかけられているのか、疑問が増えていく一同に店員がコホンと咳払いをしつつ言う


「この店は酒場でもあり、あの2人のダンジョン攻略の様子を、あそこにいるライブさんの言うには配信?と言うらしいがそれを見ながら楽しむ、これが酒場ムーヴィの醍醐味って訳だ。因みにあそこに移ってるライブさんがこの酒場店主で、あの板を作ったのもあの人だ。取り敢えず飯を食うもよし、酒を飲むもよし、あの人達の配信を見るもよし、まぁゆっくりしていってくれや」


こいつはおまけだとつまみや料理を出しながら言う店員に確かに他とは違うなと思いつつ、先ずは目の前の料理を楽しむ事にした一同であった

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