【KAC20235】それ、違います

月那

どうせボクは


「お疲れっした!」

「「「したー!!」」」


 今日も部活を終え、挨拶も済ませたボクは、更衣室に向かって歩いていた


 大学生になってまで、こんなガチの部活とかやるつもりはなかったけど、昔から体を動かすのは好きだったし、慣れてくれば、こういうのも悪くない


「あ!篠崎さーん!!」

「ああ、鴨居さん、お疲れ様でした」

「はい。篠崎さんも」


 鴨居さんは同じバスケ部の一年生で、ボクの一つ後輩の女の子。

 うちのバスケ部は、男女同じ時間にコートを分けて体育館で練習してるんだけど、彼女もさっきまで一緒に汗を流していた


「今日、この後…予定とか…あります?」

「ううん。バイトもないし、帰るだけだよ」


 ぱぁっとその表情を明るくさせ、気持ち目もキラキラしてるように見えるけど、


「あ、あの…一緒に夜ごはんとか…」


 なんだ。そういうことか。そんなの、言ってくれればいくらでも付き合うのに


「ボクでよければ」

「はぁ…」


 ん?なんとなく、目が怪しく光ったように見えたけど、気のせいかな?


 そう思って彼女を見ていると、急にふらっとして倒れそうになり、ボクは咄嗟に彼女の腰に腕を回して体を支える


「ちょ…大丈夫?」

「は、はい…」


 鴨居さんは自身の体を支えるためなのか、その両手をボクの背中に回してピッタリとくっついていて、頬を胸にすりすりしている


「ちょっと…くすぐったいよ」

「篠崎さん…」

「ほら、ボク、汗もかいてるから」


 少しお互いの体を離そうとすると、「だめ…」と言って、さっきよりも力を込めた感じで抱き締められるような格好になってしまった


「あ、あの…誰か来るかもしれないから…」

「大丈夫ですよ…うふふ…」

「え…」

「私、篠崎先輩のこと…」



 え…?


 なに?もしかして、鴨居さんって、そっち系の人だったの?


「はぁ…この胸の筋肉が…」

「…ごめん、それ…違うんだけど…」


 確かに、ボクは…ボクは…!




 こめんね。どうせボクはAカップだよ…






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