第3話 病院での生活


 俺は目をゆっくりと目を開ける。目だけしか動かせないがあたりを見回す。あれ?死んでない?ってうおぉ!なんで隣で柊が寝てるんだ。どかそうにもどかせない。


 「お、おい。柊、柊―」

 「んー?おお!起きたのかレーくん!よかったよ!私謝らなければいけないから。ごめんなさい。私が信号無視したせいでこうなって」

 「ぐああああ!やめろ!抱きつくな!痛い痛い、いたたた!」


 俺は柊に抱きつかれて結構な怪我をしていることに気づく。まじかよ。学校初日で大怪我かよ。勘弁してくれって。


 「まあ、柊が無事でよかったよ。これからは気をつけて渡れよ」

 「さすがにそれじゃダメだよ。助けてもらったんだからなんか俺しなきゃ。ここは絶対に引き下がれない!」


 ふむ。俺も命を張って助けんたんだ。お礼してもらってもばちは当たらないだろう。でも、即興で思いつくお礼なんてないんだよなぁ。ラブコメ脳の俺が思いつくのなんてキスぐらいしかない。


 「キス…かぁ..さすがにか…」

 「わかった!キスがいいんだな!それでお礼したことになるなら喜んでやるぞ」


 しまった。思わず心の声が漏れてしまった。でも生涯こんな美少女とキスをする機会俺には訪れないだろう。乗るしかないでしょ、このビックウェーブに。

 柊の顔が俺の顔に近づく。その瞬間、ガラガラと病室のドアが開き看護師さんが入ってくる。看護師さんは頭を上げるとこの光景に顔を赤くして

 

 「ご、ごめんなさい、の、ノックもせずに」


 と外に出てドアを閉める。こちらこそごめんなさい。こんなことここでするもんじゃないもんな。でもキスの機会を逃してしまったのは痛手だ。


 「す、すいませーんこんなところで。やってないので大丈夫ですよー」


 怪我したところに染みる痛みを感じながらも大声で。

 看護師さんがドアをそーっと開けこちらの中を確認し、入室してくる。


 「こほん、あなたは昨日の昼ごろに車に轢かれてしまいました。怪我は骨が数本骨折で済んでいます。もし車の運転手さんが遅れてブレーキしてたらあなたは亡くなっていたでしょう。全治は2週間ほど。骨折にしては結構短いので我慢してください。ただ報告をしに来ただけなので私はこれで」


 看護師さんは部屋を去っていく。初日で重症を負い、二週間も学校行けないのか。これじゃあ違う意味でクラスの有名人になっちまうよぉ。俺はシクシクと嘘泣きをしながら悲しみに浸る。


 「レーくん、安心して。けじめはつけるから。ノートも写させてあげるし、レーくんの、はぁはぁ、い、いい、家で、はぁはぁ、勉強会させてあげるからさ」


 嫌な予感しかしないわ。俺はこいつの変態的な趣味に引きながら

  

 「ならお礼は質問で。なんでお前は冷酷な性格なんだ?」

 「キャラ作りってやつかな?このキャラだと周りに男子に嫌われやすくなるって記事で見たんだ」


 それを書いたやつはどこのどいつだ。Sは立派な性癖の一つだぞ。柊が断っても話しかけるくるのは、学校の男子がその性格で興奮して自分から話しかけるやつだろうな。




 それからは、毎日柊に病院に来てもらい、学校の話をしてもらった。まずは学校行事を教えてもらった。五月、つまり来月に体育祭、七月に林間学校、九月に文化祭、二月にスキー教室。それで一年生の終了という感じだ。修学旅行は二、三年生なのだと。

 次に部活動。でかい学校のため色々なものがあったが、俺は二次元研究部という部活に興味を持った。大好きなアニメやラノベを仲間と共有してみたい。


 「二次元研究部、レーくんはここに入りたいんだな。なら私もここに入る。入部届は私が出すからこれに名前書いて」

 「おっ、すまん、ありが・・・おいなんだこれ」


 俺は目の前にある紙を見て理解が追いつかなくなる。婚姻届?入部届じゃなくて?俺はその場で無言でその紙切れを破り、


 「間違ったのか〜もーおっちょこちょいだな〜柊は。入部届だよ、あははははは」


 俺は笑いながら手を出す。その手に置かれたのは婚姻届二枚。


 「これじゃねえええええよおおお!」


 俺は両方とも破り捨てる。


 「ええええ!?これに名前書いてくれるだけでいいんだよ?何も間違ってないよ?」

 「馬鹿か?間違ってしかないわ!」


 こいつはダメだ、と確信し自分で出すと決断する。

 そんなやり取りの後柊は帰り、俺は夕食を食べて歯磨きをし布団の中に潜る。それにしても明日退院だ。まだそこまで立っていないし、柊に学校の様子も教えてもらった。俺もすぐ円の中に入れるだろう。そんなことを考えながら俺は明日のために早めに眠りについた。

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