第7話 ナッツ風味の鰻?残念、それは…
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クロヘラコウモリ(食用不可)
超小型の魔獣 絶滅危惧種
森林伐採などで生息地が無くなり、数が激減していた
100年以上存在を確認されていない為、絶滅した可能性有り
瘴気症(小)
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危うく絶滅危惧種を食べるとこだった
盛大に手にチビり倒してくれた黒マリモを鑑定したら、どうやら魔獣のようだ
魔物と魔獣の違いが分からんのだが、どこで判別するんだ?
とりあえずクリーンをかける
魔法に驚いたのか、2匹がまたピルピルし出した
「食べる気ないからそんなに震えるな」
食えないらしいし
すると震えがピタリと止まり、2匹がじっとこちらを見てくる
「もしかして…
人の言葉が分かってるのか?」
そう尋ねた時だった
うっかりジャングルの境目を越えていたようで、またワームが襲ってきた
しかも次は3匹
コイツらいすぎじゃね?
コウモリを離してやり、スラッシュを放つ
1体が足に噛み付こうとしてきた
「あらよっと!」
軽く避けて蹴り飛ばす
グシャッ
「うへぇ」
思ったより蹴る力が強かった様で、体がバラバラになってしまった
足に肉片が引っ付いたので蹴り払ってクリーンをかける
後で水でちゃんと洗おう
「あいつら逃げたのか?」
離したコウモリは、いつの間にかいなくなっていた
まぁいいか
ワームを回収して、さて帰ろうとジャングルに足を踏み入れたら背後でペシャッと音がする
振り返ると境目辺りで黒マリモが落ちていた
気づかなかったが、どうやら背中にくっ付いていたらしい
しゃがむと、結界に阻まれながらもちっちゃな両手を必死にこちらに伸ばしてちぃちぃと鳴いている
あ、ジャングルに入りたいのか
生息地が無いって書いてたしな
確か俺が許可すれば魔物でも入れるんだっけ?
「俺に危害を加えないなら入れてやるが…」
すると、2匹が首を縦にブンブンと振った
やっぱりこちらの言葉が分かっているみたいだ
「噛むなよ?
噛んだら握りつぶすからな」
手を結界の外に差し出すと、2匹は慌てながら直ぐに手の中に入ってきた
ちっちゃな手でしっかりと指にしがみつく
すっと手を引くと、何の抵抗もなくジャングルに入れた
立ち上がりログハウスへ向かう道中、指にしがみつきながらも周りをキョロキョロしている2匹に思わず笑ってしまった
家に着いたが、さてコイツら何処に放すかな
コウモリだもんな
やっぱり外の丸太の梁が良いか?
屋根があるし、雨避け出来て丁度良いだろ
梁の下で手を掲げる
「ほらよ
ここなら住みやすいだろ?」
止まれる様に後ろ足を梁に触れさせる
だが、何故か離れない
ギュッと指にしがみついたままだ
「おい…?」
手を目の前に持ってくると、2匹がこちらを見ていた
「なんだ?
滑るのか?」
うーん、と唸る
すると2匹は急に飛び立ち、胸元のローブに張り付いた
ブラウンのつぶらな瞳でこちらを見ながら、また震えている
なんだか目に涙が溜まっている様な気もする
「どうした
怖いのか?
安心しろ、ここにワームは来ねーよ」
そっと背中を撫でてやると
震えた声でちぃちぃと鳴いていた
「今日の晩飯は何にしようか…」
飯の準備をしたいのだが、連れて来てからというもの2匹は一向に傍を離れなかった
仕方ないな…
胸元に張り付けたままだと危ないからと、とりあえずローブを脱いでシャツの襟元に乗せた
「良いか
今から料理をするからな
…いや別にお前らを捌くわけじゃないから震えるなっ」
首元でチビるのだけは勘弁してくれ
「危ないから絶対に手元に来るな、分かったな?
難しいなら今のうちにリビングに行ってろ」
2匹はブンブンと首を横に振り、肩にしっかりとしがみつく
落ちるなよ?
収納を確認したら、トカゲ肉のストックが無かった
そういえば昼に食べたので最後だったな
収納していたほとんどはあの4人にあげちまったし
という事は
「アレがあるが…
食欲湧くビジュアルじゃねーんだよなぁ」
とりあえずデザートデスワームを解体してから、シンクに出してみる
薄い肌色の開いた蛇、いや鰻のような見た目になっていた
ただ若干ブヨブヨしている様な…うぐっ
解体しても牙がついていたりグロい見た目のままならどうしようかと思ったが、どうやら杞憂だったみたいだ
そこは良かった
ポーションで丁寧に瘴気を洗い流し、出来たての淡いピンクの岩塩を少しずつ削りながらまぶす
それとお馴染みのホーリーバジル
今回は外に放置して乾燥させておいたものだ
手で握ると簡単にパラパラと葉が崩れる
それをよく揉みこみ、塩を付けていない物と一緒に外で焼いた
付けていない物はコウモリの分だ
調べてみると、どうやら雑食性のようだし食べられるのではないかと思う
因みに、生でやろうとしたら拒否された
なんでだよ
「お前ら野生の魔獣だろ
今までどうやって生きてたんだよ、まったく…」
あ、もしかして主食は果物か?
仕方ねぇ、焼いても食べなければアロエでもやるか
他に食べ物無いしな
火が通ったみたいなので皿に移し、リビングに戻って遅めの夕食にする
熱を通した事で身が柔らかくなり、箸で簡単に解せた
変な匂いもしないので、恐る恐るそのままパクリ
「ん…?
なんか風味がナッツっぽいな」
意外である
食感はちょっと弾力のあるかなり薄味の魚で、バジルと塩が良いアクセントになってナッツの風味とマッチしている
美味い訳では無いが、思っていたより食える
噛みきれない筋の事を考えると、トカゲ肉よりはだいぶ食べやすかった
トマトとオリーブオイルとニンニクを入れて煮込めば、アクアパッツァ風になってもっと美味くなると思う
「他の食材も欲しいなぁ…」
特に野菜と調味料
肉はワームとトカゲがあるから問題ないが、何時までも野菜無しでの生活は栄養バランス的にも厳しい
何より飽きが来そうだ
肩に引っ付いたコウモリを離してテーブルに乗せる
2匹の黒まりもがピッタリくっ付いてこちらの様子を伺っている
味付け無しの肉を少し取り分け、フーフーと息を吹きかけて冷ましてから、指で摘んでコウモリの口に持っていってやる
くんくん…カプッ
おい、俺の指も間違えて一緒に食ってるぞ?
2匹は小さな口を開けて、せっせと肉を食べ始めた
口いっぱいにモキュモキュと頬張っているので、小さな頬が膨れていてとても可愛い
癒し…
頬っぺを突っついたらダメだろうか?
うん
口から肉が飛び出そうだからそれは止めておこう
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