KAC2023 第5回お題「筋肉」
水曜
第1話
キャロラインは美しい。
ベアトリクスは美しい。
ヴィヴィアンは美しい。
何度でも言おう。
キャロライン、君は美しい。
その後ろ姿には男ならだれでも声をかけたくなるような魔力がある。貧弱な薄っぺらさは一切なく、歩んできた人生を思わせる豊潤な逆三角形。どんなに遠くからでも、とどまらない色気が匂ってくる。どこに隠れたとしても、僕は君を見つけることができるだろう。
ベアトリスク、君は美しい。
繊細に扱わないと思わず壊れてしまいそうなガラスのような危うさ。ただ内に秘められた神々しい強さを僕は知っている。前も後ろも、もちろん中も。溢れんばかりの情熱が詰まっている。くるくると回って見せてくれた可憐さは、瞼に焼き付いて決して離れることはない。
ヴィヴィアン、君は美しい。
君にはすべてを支えるような大きな包容力がある。一度君を知ってしまえば、君なしではいられない。君なしでは立っていることもできない。君なしでは生きていけなくなってしまうだろう。もちろん僕も君の虜だ。まさになにもかもを骨抜きにする魔性。恐ろしくもうっとりする。
「さあ、キャロラインにベアトリクスとヴィヴィアン……君たちの美しさを存分に発揮してくれ」
「あのトレーナー、人の筋肉に勝手に名前をつけるのやめてもらえます?」
「何を言う。しっかり名を呼び十分に可愛がってこそ、筋肉も応えてくれるんだ」
「……はあ。あの、私これから大会本番なんですけど。何かアドバイスとかあります?」
「自分の肉体を信じろ。筋肉は絶対に裏切らない」
僕は自分が担当する選手の背を押す。
広背筋のキャロラインが推進力を生みだし。三角筋のベアトリクスが両腕を高速回転させる。大腿四頭筋のヴィヴィアンは水を鋭く蹴りつけた。完璧なフォームに連動した完璧な筋肉の働き。
彼女たちを従える我が選手はより一層の輝きを放ち、見事に競泳女子の部で世界記録を出し優勝した。
KAC2023 第5回お題「筋肉」 水曜 @MARUDOKA
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