第7話
「エミリ! ウサウィリアのことはいいとして……これ以上、その剣を振るうのはやめなさい! じゃないと貴女、そのうち本当に大変なことになるわよっ⁉」
気を取り直したアレサが(まだ「ウサウィリアのことはいい」とか言ってるけど……)、またあたしのことを心配してくれた。やっぱこの子、ホントに優しくていい子なんだよね。
でも。
「だーいじょぶだってー! あたし、これでも結構、運はいいほうだからー」
「そ、そんなこと言って! 何かあってからじゃ、遅いのよ⁉」
「だーかぁーらー……アレサたちが魔王と戦うのをやめてくれたら、すぐにやめるってばー!」
「ああ、もぉうっ!」
あたしだって折れるわけにはいかない。
ここでアレサたちを先に行かせたら、彼女たちは魔王に倒されてしまう。彼女たちのほうが、死んでしまうんだから!
「はぁぁー!」
剣を振りかぶって、アレサに向かっていく。
「……仕方ないわね!」
格上の相手に真正面からぶつかるなんて、無謀すぎる気もするけど。
「こうなったらエミリ……吟遊詩人で非戦闘員の貴女には悪いけど、少し手荒な方法を取らせてもらうわよ⁉」
案の定、呆れたアレサがあたしに向かって何かの魔法をかけてきたけど。
でも、これでいい。
だってこれが、何回も試した上での最善策なんだから。
アレサの前に火の玉が現れて、斬りかかるあたしの眼の前まで飛んでくる。勢いがついているから、当然避けることなんて出来ない。その
「エ、エミリ! 大丈夫⁉」
自分が放った攻撃が相手に当たっただけなのに、アレサは心配してくれる。
うん。やっぱりあんたは、魔王なんかに殺されちゃダメだよ。あんたもウィリアも、こんなところで死んでいい人間じゃないよ。
……当然、あたしは無傷だしね。
直撃した火の玉から無傷で脱出……どころか、その火属性の力を左腕にはめた
「そ、それは……!」
当然その腕輪のことも知ってるらしいアレサは、すぐに対策をうつ。
今度はさっきの火とは反対の水属性の魔法で局所的な津波を起こして、それをあたしにぶつけてきた。
でも……。
あたしの左腕の腕輪はその津波も『吸収』してしまう。そして、今は火から水属性に変わった剣を、アレサに向かって振り下ろした。
実はあたし、この戦いのためにギャンブル剣の『神々の悪戯』の他に、もう一つ特殊な装備を用意してた。それが、さっき二回も魔法を吸収した腕輪だ。
名前は『光の五法輪』って言って、実はコレ、それぞれ土水火風闇の属性を吸収する効果がある五個の腕輪をくっつけて一つの腕輪にしている。普通はそういう属性アイテムって、何種類も同時に装備すると反発しあって壊れたり爆発したりしちゃうから、どれか一属性しか装備出来ないらしいんだけど……。この腕輪の場合、五個の腕輪が魔力絶縁体で隔離されていて、お互いに影響を与えないようになっているからその点は大丈夫。
しかもその絶縁体部分を動かして調節して、土水火風闇のうちのどれか一つの腕輪だけが表側に出るように
つまり、五属性のうちのどれか一つの吸収効果を、いつでも好きなときに切り替えることが出来る腕輪ってことで……うまくタイミングを合わせて調整すれば、五属性どの攻撃が来ても全部吸収しちゃえるというわけ。
……ま、ぶっちゃけそれはあくまでも理論上の話だけどね。
実際の戦闘だと、相手が次にどの属性攻撃をしてくるかなんてわかんないし、見てから腕輪を調整なんかしてたら間に合わなくて、その間に攻撃を受けちゃうから全然意味ない。
理論だけはご立派だけど、実践では使い物にならないジョークグッズの一種。
だけど……やっぱりこれも、あたしなら完全に使いこなせる。
事前に五種類のうちのどれか一つが表側になるようにセットしておいて、次のアレサの属性魔法がそれと同じなら続行、違ってたら時間を戻してその属性に設定し直せばいいんだ。当然、アレサがあたしに致命傷になるほどの強力な攻撃なんてするはずないから、絶対に『
だからさっきもあたしは、戦いが始まる前から火属性にセットしておいた腕輪で、アレサの火の玉魔法を吸収することが出来た。そして、そのあとすぐに水属性にセットし直して、津波魔法を吸収したんだ。
ま、それはとにかくとして……。
これでようやく、この戦いも終わりに出来そうかな。
「やぁぁぁーっ!」
「ぐぅっ!」
二度も攻撃を吸収されてスキだらけになったアレサに、水属性の魔力に包まれたあたしの剣が、ヒットした。
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