第184話 鋼鉄のアレ

結論から言うと俺はモンスターのアレを甘くみていた。

マッパで剥き出しとなっているそれは、格好の的で前衛の俺たち三人は葛藤はありつつ当然のように距離を詰め間合いに入った瞬間攻撃を開始する。

初見でオークの動きはわからないけど、体型的に鈍いはず。

先手必勝だ。

スパッといくべく水月を振るい腕に力を込めた。


ガキィイイン


「なっ……」


水月の刃は確かにオークのアレを捉えた。

位置的にも大きさ的にも俺の技術でも十分にヒットさせることができたにも関わらず、切り落とす事は叶わなかった。

硬い衝撃で水月を持つ手が痺れる。


「ブウウウウウフウウウウウ〜!」


斬れたのは僅か。

ただし場所が場所だけにオークは痛みを感じたのか雄叫びをあげ激しく暴れ始めた。

暴れ始めたオークはその巨体もあり圧力が強い。

その攻撃は当たるとただでは済まなさそうだ。

海江田さんも、同じくもう1匹のアレに一撃をお見舞いしたようだけど、切り落とす事はできなかったようだ。

やはりオークのアレは鋼の刃よりも硬い。

これがモンスター……。

わかってはいたけど、モンスターとは俺の想像を超えた存在。

こうなったら選択はどちらかしかない。

このまま、アレを狙い続けるかそれともターゲットを変えるか。

怒り狂ったオークの動きはアングリーバフがかかっているのか素早く、そして荒々しく動きが読みづらい。


「先輩フォローします! 『ゲルセニウムバイト』」


棘の蔦がオークの足に絡みつき動きを止める。


「助かる!」


「ブフウウウウウ」


迷っている時間はない。

俺はアレへの攻撃を諦め水月をオークの突き出た腹へと切り替える。

これで腹まで刃を弾くようならかなり厳しくなる。

振るった水月の刃はオークの腹へと吸い込まれ、そして裂いた。


「ブフウウウウウウウ〜!」


腹は柔らかい。

他のモンスター同様に水月で問題なく斬れる。

そのまま腹を何度か斬りつけるとオークはその場から消滅した。


「海江田さん! 山田さん! 腹です! 腹は普通に斬れます!」

「おおっ」

「わかったっす」


海江田さん達も狙いを腹へと変更し二人がかりで腹を裂きオークを消滅させる事に成功した。


「終わったな。それにしてもアレほど硬いとは」

「海江田さんそれ下ネタっすか」

「いや、そんなつもりはなかったんだが」

「ははは、でも驚いたっすね。腹が弱点だったとは。灯台下暗しというかなんというか」


確かに。

まさにモンスターのモンスターたる所以を実感させられた。

それにしても野本さんのサポートがないとちょっとヤバかった。

さすがは野本さんだ。

俺達の中で1番年下の彼女が1番冷静だった。



お知らせ

書籍版は来月くらいに発売されるかも。


ABEMAで本日9/22 15時15分からモブから始まる探索英雄譚全話一挙放送。

たぶん無料です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る