第174話 遠征前の1日

土曜日に強制依頼がかかっているとはいえ、それまでの間は特に何も変わらない。

イレギュラーな情報があるわけでもないし、特別な準備を必要としてるわけでもないので普段通りにやるしかない。

大前と岸田も特別準備をしてる感じもない。

まあ、元々岸田はそういうタイプでもないしな。

寧ろ初めてのダンジョンに遠足気分で盛り上がっているきらいすら感じられる。

俺はというと、岸田と一緒で他のダンジョンも見てみたいという好奇心はあるものの、ホームダンジョンですら何度かイレギュラーの対応に追われた事があるので、慣れていないダンジョンでの活動に不安がないと言えば嘘になる。


『ゲルセニウムバイト』

「紬ちゃんナイス。舞歌!」

「うん、まかせて」


ゴブリンに向けて舞歌がボウガンの矢を放つ。

もう手慣れたものだ。

最近では、3人の連携も深まり俺はいらないんじゃないかと思う場面も増えてきた。

平日の放課後は向日葵と時間が合わない事も多いので4人で潜る事も多い。

放課後に潜ることができる時間はおよそ2時間程度。

階層攻略を進めるにはどうしても時間が足りないので基本は踏破エリアでのモンスター駆除に時間を割く。


「こんどは私の番! いっくよ!」


英美里が手に持つ短刀十六夜でゴブリンの急所を正確に突き消滅させる。

英美里もステータスの上昇と技術も上がった事もありゴブリンくらいならスキルを使わなくても倒す事が出来るようになっている。

野本さんは完全な後方支援タイプなので、直接攻撃の回数は少ないけど彼女のスキルによる集団戦の優位性は絶大だ。

そして、今日はいないけどここに向日葵が加わると強力だ。

向日葵は、唯一セイバーではないけど多分俺たちの中で1番強い。

元々強力だった二つのスキルの威力が上がり、しかもステータスが上がったおかげで直接攻撃もいける。

攻撃の面では1番だろう。

たまに向日葵さんと呼びそうになってしまう。

ただレベルが上がったとは言っても中学生。

前に出てガンガン戦わす事には抵抗を覚えるので、基本俺の後ろに位置してもらうことが多い。

そして俺はといえば、ちょっと足踏み状態だ。

レベルがある程度上がったせいでレベルアップに必要な経験値が増えたのか、最新レベルアップしていない。

装備に不満はない。

正直ゴブリン相手には過剰なくらいだとは思うけど、向日葵のスキルほどではない。

毎日ゴブリンを相手にしているおかげで手慣れてきたし、多少技術も上がったとは思うけど、.達人とかそういうレベルには程遠い。

もちろん男は俺だけだし前衛に立って身体をはる気持ちはある。

だけど、他のメンバーの成長が著しく、そこまで身体をはる機会も多くはない。

それがパーティにとっていい事なのは間違いない。

ただ、俺の存在価値が薄らいでいるような……。

そんな気持ちが全くないと言われれば嘘になる。

俺って小さいな……。


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