第89話ミノタウロス戦5
「なんなのいったい。『アイスフィスト』」
「ここで押し切らないとまずいです。『ゲルゼニウムバイト』」
今までのでもやばかったのに、あれはおかしい。
銃も含めたこちらの攻撃がほとんど通っていない。
「パァ〜ン」 「パァ〜ン」 「パァ〜ン」
異変を感じ取った俺以外のメンバーが総攻撃をかける。
俺も、幾分肩の痛みは和らいできたが、この状態では剣を持ってあれと戦う事はできない。
焦りだけが募るが、今の俺にできる事は限られてしまう。
「グウウウウウウウウイイイイイイイイイイイ〜!」
ミノタウロスが何度目かになる咆哮をあげると、こちらのメンバー全員をギロっと睨めつけ爆ぜた。
「向日葵〜! 避けろ!!!」
「来るな〜! 『アイアンストライク』」
咄嗟に放った鉄球のおかげで辛うじて攻撃を避ける事ができたが、明らかにミノタウロスのスピードが上がっている。
すぐに次の攻撃が襲ってくる、向日葵が危ない!
俺に残された手段。
少し前のURガチャで排出された商品の中で今まで使わずにストックしてある、それを急いで呼び出す。
『飯綱』
排出された時は読み方が分からず、美味しいご飯の品種が当たったのかと思ったが、その後スマホで検索して読み方が判明した。
イズナ。
スマホ情報によると飯綱は妖怪の一種。
妖怪!? とは思ったけど妖精さんも妖怪も一字違いだしあり得るのかとその場は納得はしたものの妖精さんと同じなら1度喚んだらそれっきりの可能性も高い上に妖怪の能力がどうなのかも全く分からなかったのでここまで使ってこなかった。
だけど俺自身が戦闘不能に近い今頼れる可能性があるのはこいつだけだ。
頼む〜!
俺は痛む腕でスマホをタップする。
タップした瞬間目の前にはイタチかカワウソを思わせる姿の飯綱が現れた。
小さい……。
妖怪というからそれなりに身構え覚悟を決めて喚び出してはみたが、その印象は思っていたよりも小さい。
巨大化したミノタウロスと比較してその姿はあまりにも小さく映る。
この飯綱がスマホ情報通りだとするならその能力は風。
飯綱とはよく知られている妖怪かまいたちの別名らしい。
だが、こんなに小さくちゃあの強靭なミノタウロスと戦えるのか?
「キュイ?」
飯綱がかわいく声を上げるが、妖精さん同様に当然言葉はわからない。
だけどもう、こいつに託すしかない。
「飯綱、頼む。あのミノタウロスを倒してくれ! 頼む」
「キュイ」
伝わっているのかはわからないけど、たぶん俺の言葉に返事してくれたんだと思う。
その瞬間飯綱の姿がその場から消えた。
一瞬、役目を果たさず勝手にいなくなってしまったのかと思い焦ったが、そうではなかった。
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