第88話 ミノタウロス戦4

ミノタウロスが一歩踏み込みその手に持つ戦斧を振りかぶった。

もうダメだ。


「パァ〜ン」

「ガァッ」


甲高い破裂音がしてミノタウロスの腕が穿たれた


「パァ〜ン」 「パァ〜ン」 「パァ〜ン」


向日葵か。


「『ヒール』 御門くん。今のうちに」

「神楽坂さん」


神楽坂さんのスキルで、少しだけ腕の痛みがマシになってきた。

時間をかければ完全に回復するかもしれないが今はその余裕はない。

神楽坂さんの肩を借りて、起き上がりその場から離脱する。


「お兄ちゃん、時間ぴったりだよ。あとは私にまかせて」

「パァ〜ン」 「パァ〜ン」


ミノタウロスの巨体に面白いように向日葵の放つ銃弾が命中する。

やはり向日葵だ。

銃をあずけて正解だった。

さすがのミノタウロスも銃の前には無力のようで銃弾を受けるたび呻き声を漏らし血を流している。


「パァ〜ン」


「御門、向日葵ちゃんのあれって本物の銃よね」

「ああ、そうだと思う」

「それって、御門のスキルで?」

「そう」

「御門のスキルってなんでもありね。一時はどうなることかと思ったけど、あれなら問題なく倒せそうね」

「やっぱり銃ってすごいな」


「パァ〜ン」


それにしてもしぶといな。今ので何発目だ?


「もういい加減消えて」

「パァ〜ン」


ミノタウロスはその太い腕を十字に構え防御に徹しているが、既にその腕は弾痕でボロボロだ。


「グアアアアアアアモオオオオオオオオ〜!」


攻撃に耐えかねたのか満身創痍のミノタウロスが吠えた。


「叫んだって怖くないんだからね」

「パァ〜ン」


向日葵は容赦なく銃弾を撃ち込んでいく。


「グゥモアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア〜!!!」


末期の叫びだろう。ミノタウロスが一際大きな声をあげた。

強かった。やはり神話に出てくるようなやつだけあって桁違いのパワーと耐久力だった。

ただ、ここは神話の時代ではなく現代。

現代の武器の前には無力だったということだ。


「先輩? なにかおかしくないですか?」

「え?」

「ミノタウロスの身体が大きくなってるような」


「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」



確かにその姿はさっきまでよりひと回り大きくなっているように見える。

そして、なぜか先程まで全身から流れて出していた血が止まっている。


「向日葵!」

「わかってる。なんで倒れないの!」

「パァ〜ン」 「パァ〜ン」


「ゴアアアアアアアアアアアアアオオオ〜!」


「なっ!」


信じられない。

なぜか大きくなったミノタウロスは、銃弾を受けても健在だ。

先程までは確かに致命傷と呼べるようなダメージを与えることができていたのに、今命中した弾はめり込んではいるが、表面に近いところで止まってしまっている

なにが起こってるんだ。

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