第86話 ミノタウロス戦2

「やった?」


完璧に氷の槍は刺さっているように見える。


『グガアアアアアアアアア」


ミノタウロスが吠え、左手で氷の槍を払い除ける。

確かに氷の槍はミノタウロスの皮膚を貫いてはいたが、そのダメージは僅か。

僅かばかりの出血は見られるが、致命傷には程遠い。


「これなら! 『アイアンストライク』」


たたみかけるように向日葵が鉄球を撃ち出すが的が大きいおかげで向日葵の攻撃も直撃する。


「ゴッ」


直撃した鉄球の威力に押されるようにミノタウロスの口から声が声が漏れ出す。

みんなの連続攻撃のおかげで、少し時間が稼げた。

その恩恵で距離を取り観察する時間が取れた。

このミノタウロス、耐久力は赤茶色のガーゴイルを完全に凌いでいる。

ただ、これだけ攻撃が当たるって事は、移動スピードはともかく反応速度は鈍い。

それに、向日葵や野本さんのスキルも効果は薄いが、一瞬の足止めにはなっていた気がする。

怖い。死ぬほど怖い。

だけど、踏み込んでスピード勝負に持ち込めばなんとかなる。気がする。

足が震える。


「うああああああああああああああ〜!」


叫び声で無理矢理震えを止めて、再びミノタウロスとの距離を詰める。

それと同時に両手で雷刃を振るう。

硬質な抵抗感と共に浅くだが僅かに斬れる。

防具もつけていないのにこの硬さ。だが斬れる。

そして、普段は斬ればモンスターは消滅してしまうのであまり実感する事はできないが、雷刃の副次効果。

電気を纏った刃による電気ショックの付与。

つまりは電気により斬られた相手は筋肉が一瞬硬直する。

それはこの目の前のミノタウロスも例外ではなく、その隆起した筋肉が硬直したのがわかる。


「うおおおおおおお〜!」


ただ、この巨体を誇るミノタウロスが硬直するのはほんの一瞬。

次の瞬間には硬直から抜け出し反撃しようとしているのがわかる。


「あああああああ〜!」


とにかく腕を振り手を動かして、斬りつける。

ミノタウロスに動き出すタイミングを与えちゃダメだ。

必死で斬りつけるが、深手を与える事はできない。

振るう腕には乳酸が溜まってきて、身体と肺から酸素がなくなっていく。

底上げされたステータスを持ってしてもずっとは無理だ。


「先輩、下がってください.『ゲルゼニウムバイト』」

「御門くん、回復します。『ヒール』」


俺の身体が悲鳴をあげ、ミノタウロスをとどめて置けなくなったタイミングを見計らって野本さんがスキルでミノタウロスを縛り、神楽坂さんが回復をかけてくれた。

僅かの時間で完全回復とはいかないが、これでまた戦える。

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