第67話 陰の実力者?

気合いで乗り切る。


「おおおおおお〜」


そう決めて力を絞り出すが、ガーゴイルの圧力を前にして数合で限界が近づいてきた。


「くそおおおお〜」


アドレナリン全開で吠えたが、気合いで超えられる壁じゃ無いかもしれない。

対応しきれなかった攻撃を何箇所かにくらってしまい出血もしてしまっている。


「強すぎなんだよ〜!」

『ウィンドブラスト』


え!?

それは突然だった。

俺が限界を迎え、愚痴にも似た叫び声を上げたとほぼ同時にガーゴイルの動きが止まった。


「大前……」


ゼロ距離からの風の弾丸。

目の前のガーゴイルとやり合うのに必死で全く気が付かなかったが、いつの間にか大前がガーゴイルの背後へと回り込んでおり、ゼロ距離からスキルを発動していた。

ガーゴイルも俺に気を取られていて気が付かなかったのか、無防備な状態で背中に大前のスキルをくらった。


「能瀬、岸田、今しかないぞ」


あまりの出来事に呆気に取られて俺の動きまで止まってしまっていたが、大前の言葉で我に返り右手に持つ地刃利をその場に手放し左手に持つ蝦蟇斬りを両手で携え身体毎ガーゴイルへと突っ込んだ。

片手ではコイツを断ち切ることはできない。

地刃利ではなく蝦蟇斬りを選んだのは、何となくガーゴイルはその響きと風貌からカエル属に近い気がしたからだ。

少しでも蝦蟇斬りの性能が発揮されるのを信じて刀身を突き立てる。


「グアッ」


硬い外皮を突き破り、手元に肉を抉る感覚が伝わってくるが、ガーゴイルが痛みに悶え密着状態の俺に向けその大きな口を開けた。

まずい。食われる。


「だから舐めんなって言ってんだろうが! 『ファイアボール』」


「グバハァツ」


絶妙のタイミングで岸田が放ったファイアボールが大きく開いたガーゴイルの口の中に命中し、鼻に焼けこげた臭いが充満する。


「ドンッ」


ガーゴイルの身体に振動が伝わり、俺の方へと重みが加わる。

大前だ。

大前が背後から俺の渡した剣でガーゴイルを貫いたのが見えた。


「ガ、ガッツ」


「まだか」


大前、なんか陰の実力者みたいになってるけど冷静に「まだか」って。

それにしてもかなり弱っているのは間違いないが前後から貫かれてまだ消えないってどういうことなんだよ。


「うおおおおおおおおおお〜! 俺だ俺だ俺だ〜御門〜大前〜絶対離すなよ〜。死ねええええ〜!」


俺と大前に貫かれ完全に動きが鈍った赤茶色のガーゴイルに向かって岸田が飛びかかり、首と頭部を何度も剣で斬りつけた。


「さっさと死ね〜! オラああああ〜! 死ね死ね死ね〜!」


岸田が完全に悪役然としたセリフを口に出しながらめった斬りにしていく。

途中何度かガーゴイルが動き出そうとしたが、俺と大前が刃をねじ込み全力で留め、そして消滅した。


「オラアアア〜! 俺だ! 俺が討ち取ったぞ! 見たか〜!」


岸田がうるさく騒いでいるが、流石につっこむ余裕も気力もない。

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