第66話 三刀流は無理

「おいおいおい、なんか違う事ないか?」

「いや、いや、いや、でけ〜だろ」

「こいつ本当にガーゴイルなのかよ。色もサイズも違うぞ!」


明らかに今まで戦っていたガーゴイルとはサイズも色も違う。

一回り以上大きい。

確かにその見た目はガーゴイルのものだが、その大きさのせいで感じる圧力は明らかに強い。

いや、見た目が少しくらい違っても俺たちのやる事は変わらない。


「ギイイイイイエエエエエエ〜」


その大きさに比例するように叫び声の大きさも大きく、ビリビリと空気が震える。

2匹の赤茶色のガーゴイルが、首を動かして俺たちの方をゆっくりと見回す。

そして、俺と目線が合うとニヤリと笑ったような気がした。

次の瞬間、ガーゴイルが爆ぜた。

いや、正確には爆ぜたように錯覚するような爆発的加速を見せ一気に迫ってきた。


『ウィンドブラスト』


大前がスキルを発動するが、確かに命中した風の弾丸を無視するかのように突進してきた。


「ふざけるなっ!」


スピードは先程倒したガーゴイルを上回っているが、警戒していたおかげでどうにか反応できる。

右手の地刃利を必死に振るうが、敵の勢いに押され弾かれてしまう。


「なっ」

「舐めんなぁ、俺の炎で燃えろ〜! 『ファイアボール』」


岸田の放った火球がガーゴイルを捉えるが、全く止まる素振りを見せる事なく攻め立ててくる。

ガーゴイルの攻撃を必死に二刀で捌こうとするが、攻撃が重すぎて耐えきれない。

一撃を受ける毎、腕には関節が壊れてしまうかと思えるほどの衝撃が伝わってきて、筋肉が悲鳴を上げる。

二刀を最大限に使っても足りない。

どこかの剣豪が三刀流を使いこなしていた気がするが、俺が顎の力でこの一撃を受けたら確実に顎が砕けるか、歯が全て無くなる以外の道はない。

手数も力も足りない。


「くっそおおおお〜!」


コイツは完全にさっきまでのガーゴイルとは違う。

さっきまでのやつでもギリギリだったのにふざけるな!

身体が悲鳴を上げる。

きつい。


「御門くん、頑張って『ヒール』」


神楽坂さんが後方からスキルを使って回復してくれる。

身体の乳酸が抜ける感覚があるが、それもガーゴイルの攻撃を一撃捌くだけで効果が打ち消されてしまう。

全てが俺を上回っている敵を前に勝ち筋が全く思い浮かばない。

このまま押し切られて負ける。

いや、そうじゃない。

俺はあの日強くなると誓った。

こんなところでやられるわけにはいかない。

こういう時を乗り越えるためにダンジョンに潜ってレベルを上げたんだ。


「ああああああああ〜」

「御門だけじゃねえんだ! 俺を無視するな〜! 『ファイアボール』」


必死に腕を動かす。

こうなったらもう気合いだ。

能力で劣るなら根性で勝ってやる。


「うおおおおおおおお〜!」



御礼

気がついたら1000ptを突破していました。カクヨムでの知名度が今ひとつなのでど〜んとはいきませんが嬉しいです。応援してくれた読者の方々ありがとうございます。

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