第25話 剣は一本だけじゃない

衝撃で腕が、手首が痺れる。

そして吹き飛ばされ叩きつけられた背中が痛い。

だけどここでやられてやるわけにはいかない。

俺には家族が向日葵が待っている。

俺がこのままやられたら、クラスのみんなもやられる。

神楽坂さんかわいいもんな。

こんなモンスターにやられるとかありえない。

かわいいは正義だ。

三上さんだって違った方向でかわいい。

こんなモンスターに食わせてやるわけにはいかない。

俺は痺れる手でスマホを2度タップし剣を呼び出す。


「一本でダメなら二本でどうだ! 俺はセイバーじゃないけど、俺だって能力者なんだ! お前なんかに負けてやるかよ!」


俺は両の手に剣を携え、体を起こしガーゴイルと対峙する。

もう感覚が麻痺して、ガーゴイルの事を怖いと思う事は無くなった。

剣はまだまだある。

ガーゴイルをよく見ると腕には火傷とさっきの攻防での刃傷。背中の翼は片方が裂けている。

俺以上にダメージあるんじゃないか?


「ガアアアアアアッ」


ガーゴイルが吠え、一直線に俺に向かってくる。

だけど俺には見えている。

このまま受ければ俺はまた飛ばされる。

右足に力を込めガーゴイルの突進を避けると同時に力任せに両手に持つ剣を振るいガーゴイルに切り付ける。


「ギャアアッ」


俺はこの戦いの中で手応えを掴んでいた。

パワーは完全に負けているがスピードだけはどうにか対応できる。

俺のステータスの中ではAGIの値が1番高い。

AGIは十分渡り合える。

そして俺の『ガチャ』で排出したこの剣はガーゴイルの肉を断つ事ができている。

このままいけばやれる。

ガーゴイルは血を流しながらも戦意を失うことなく俺に向けて突進を敢行してきた。

ダメージでさっきほどのスピードはない。

十分対応できる。

ガーゴイルの動きに集中して、剣を合わせようとした瞬間、ガーゴイルは急停止し、その腕を俺の側面から振るってきた。


「くうううっ」


必死に右手に持つ剣を滑り込ませるが剣の上から攻撃を叩き込まれ、俺の身体は横にくの字を描き弾き飛ばされた。


「グハッ」


痛い、痛い、痛い。

ここが学校じゃなきゃ泣き叫んでしまうくらい痛い。

なんだあいつ。力技だけじゃなくフェイントを入れてきた。

戦いの素人の俺に対応できるはずがない。

ゴブリンだったらもうとっくに終わってる。

ガーゴイルどんだけ強いんだよ。

クソッ。

完全に俺を上回っている。

だけど、それなりに時間は稼いだはずだ。

神楽坂さん達逃げれたかな。


「うああああああ〜!」


大前。

顔を上げると大前が、手に持つ短刀で身体ごとガーゴイルにあたったのが見えた。

大前、お前すごいな。

さっきまで睨まれたカエルみたいに竦んでたのに、ここでやれるのか。


「グガアアア!」


短刀がガーゴイルの脇腹を抉るが、怒り狂ったガーゴイルに大前は殴られ戦闘不能に陥った。


あとがき

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