第23話 救援

その時廊下の奥から声が聞こえて来た。


「おいおい、そんなに慌ててどうしたんだ。俺に助けて欲しいのか? しょうがねえこれもセイバーとしての務めって奴だからな。俺に任せとけよ。それでどこにいるんだ? 教室の中か? 大前の奴はどうしたんだよ。もしかしてセイバーのくせに逃げ出したのか? こりゃ通報もんだろ、ハハッ」


岸田か。いいタイミングで来てくれた。態度はいただけないが今は岸田に頼る他ない。


「岸田! 教室の中だ! 急いでくれ。頼む!」

「はい、はい。岸田じゃなくて岸田くんな!」」


岸田は余裕をかましながらゆっくりと教室に向かってくる。


「大前、いまだ! 逃げろ!」

「む、無理だ」


大前が蛇に睨まれたカエルのようになってしまっている。

少し距離のある俺でも、身体の震えが止まらないんだから仕方がないが岸田の動きが遅い。

クソッ。

大前は悪い奴じゃない。女の子達にチヤホヤされて羨ましいところはあるが俺と違ってスキルを役立てる為セイバーとなり、前回も、今回だって1番に矢面に立っている。

スキルが通用しなかったのは結果論で、大前のせいじゃない。

俺は腰に下げたナイフを手に持ちレベル3になったステータスで背をむけたガーゴイルに思いっきり投擲した。

勢いのついたナイフが一直線にガーゴイルの背中に突き刺さった。


「ギョアアアアアアア」


ガーゴイルの叫び声がこだまする。

俺はすぐにスマホをタップして死蔵してあったショートソードを発現させ手にする。


「岸田ああああ〜! 急げえええ〜!」


流石に状況を察したのか岸田が小走りでやってくる。


「お、おい、なんだよあれ。ゴブリンじゃねえじゃねえか。なんだあの大きさ。聞いてないぞ」


岸田はガーゴイルを見るなりいきなり怯み始めた。


「岸田ああああ〜! セイバーなんだろ! スキルだ! スキルを使ええええ!」

「うっせ〜言われなくても今使ってやるよ!だまって見てろ。くらえええ!」


岸田はあたふたしながら、雑魚キャラのようなセリフを吐きながらスマホをタップした。

その瞬間、空中にソフトボール大の火球が現れガーゴイルに向かって飛んでいった。


『ジュツ』


「ギョアアアアアアアァァ」


火球がガーゴイルに命中し肉が焼ける臭いが教室に立ち込め、ガーゴイルの絶叫が響き渡る。

火球は小さいが確実にダメージは与えている。


「岸田、頭だ! 顔を狙え!」

「うっせえんだよ。いちいち指示してくんな!」


再び岸田がスマホをタップしスキルが発動する。

火球がガーゴイルの顔に向けて飛んでいくが、それを見たガーゴイルが腕をクロスして頭部を護った。

火球はガーゴイルの腕に命中しまた肉を焦がす臭いが充満する、


「岸田、効いてるぞ!」

「うるせえって言ってんだろうが」


再び火球が発現してガーゴイルの腕を焼く。

このまま続ければ勝てる。ガーゴイルがデカくても火は確実に効いている。

だが、四発目の火球が放たれる事はなかった。


「岸田……まさか」

「クソッ、打ち止めだ」


マジか。まさかの打ち止め。もしかしなくても岸田もレベル1なのか!

これでセイバー2人がスキルを使い果たしてしまった。

ガーゴイルに多少のダメージは入ったが致命傷には程遠い。

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