第7話 向日葵のスキル

目には見えないが明らかにそこに何かがあるのを感じる。

これが『グラビティ』なのか。

効果を検証する対象がいないのでハッキリとはわからないが、どう考えても相手を攻撃するスキルに思える。


「お兄ちゃん、どう?」

「多分発動してると思う。重力で相手を潰すスキルじゃないか」

「見えないからよくわからないけど、『アイアンストライク』もやってみるね」

「なにもない所、上空を狙った方がいいな」

「わかった」


向日葵が再びスマホに触れると何も無かった空間に突然ソフトボール大の鉄球が現れ上空へと飛んで行きそして消えた。


「お兄ちゃん」

「すごいな。本当に出たな」

「うん」

「向日葵、スキルが発現した事はとりあえず内緒な」

「わかった」


俺のガチャとは違い向日葵のスキルは完全に戦闘向きだ。

もしかしたらゴブリンやモンスターを倒す事ができるかもしれないが、向日葵自身はただの中学生だ。

いくらスキルが使えても襲われて無事に済むとは思えない。

それに有用なスキルが使えると周りに知られれば無理にでもセイバーにされてしまうかもしれない。

今の所、俺達の生活圏にモンスターが出現したという話はきいたことがないので無理をする必要もない。

スキルのことは向日葵と2人だけの秘密にして、俺達は普段の生活へと戻った。


それから毎日一回のガチャを引くのが日課となっているが、やはり大した物は出なかった。

唯一武器になりそうなのは万能包丁が一度だけ出たが、結構切れ味がいいと母さんが喜んで使っている。

それから半年が経過したある日それは起こった。


『セカンドブレイク』


再び世界に新たなダンジョンが生まれ、更なるモンスターが生まれた。

そして今度は俺の生活圏にまでモンスターが現れるようになってしまった。

俺はまだ一度も見てはいないが、突然学校に来なくなった奴が現れ、聞くとモンスターに襲われ重体とのことだった。

もう俺達の生活は安全じゃない。

今まで通りに生活することはできないんじゃなかと思うには十分な出来事だった。


「お兄ちゃん、今日学校の生徒が1人亡くなったみたい」

「!! 学校の生徒が!? 向日葵、もしモンスターを見たら周りに構わずとにかく逃げろ。それでもどうしてもダメならスキルを使え。お前のスキルならなんとかなるかもしれない」

「うん」


とにかく命が1番大事だ。

これはアニメやゲームじゃない。

一撃喰らえば死んでしまう。

モンスターに噛まれれば未知のウィルスに感染する可能性だってある。

子供の俺たちに出来る事は何もない。

今は、なにも起こらない事を祈るしかない。

だけど向日葵の学校の生徒が亡くなるなんて、確実にモンスターが近づいて来ているのを感じる。

正直心の中は不安でいっぱいだ。

これから俺達はどうなってしまうんだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る