第5話人類の剣
「お兄ちゃん、すごいよ。今テレビでもやってるけど世界中にお兄ちゃんみたいにスキルを使えるようになちゃ人たちが現れたんだって。ほら、この人は魔法使いだよ」
向日葵に見せられた映像では、日本人と思しき男性が『ファイアボール』と唱えると手の先にドッジボールぐらいの炎の玉が現れ飛んでいったのが映し出されていた。
これは完全に魔法だ。
ゲームの世界そのものの魔法。
すごいな。
「たしかに魔法だな」
「お兄ちゃんも使えるようになったりするのかな」
「いや、どうだろう」
咄嗟に誤魔化してしまったが俺の『ガチャ』でこれができるようになるとは到底思えない。
「ちょっとやってみるな」
そういって俺は3度目の『ガチャ』をタップする。
「魔石? なんだろう」
俺は聞き覚えのない表示された魔石という文字をタップする。
「わぁ、綺麗。もしかして宝石?」
「う〜んどうかな。魔石らしいけど」
現れたのは透明な青い宝石のようなもの。大きさは10センチくらいはありそうなので普通の宝石に比べるとかなり大きい。
「魔石って、なんか良さそうじゃない。もしかして高く売れたりするのかな」
「どうかな〜」
向日葵の気持ちもわからなくはないけど、正直全くわからない。そもそも魔石なんて今まで聞いたこともない。ただのガラス玉ならほとんど価値は無さそうだけど、宝石にしては大きすぎる気もする。
それから両親にも青い魔石を見せてみたが、当然魔石の価値は全くわからなかった。
そして、その後、価値ある物が当たることなくいつもと変わらない平和な1週間が経過したその日世界は一変してしまった。
その後の世界で変革の日『ファーストブレイク』とのちに呼ばれる7月14日にそれは起こった。
突然世界中にダンジョンと呼ばれる地下迷宮が現れ、そのうちのいくつかからモンスターと呼ばれる怪物が溢れ出してきたのだ。
映像でみるその姿はまるで映画の特撮映像を見ているかのような錯覚を覚えるほど異質なものだった。
そのうちのいくつかは俺でも名前を想起することができる姿をしていた。
「ゴブリン……」
その姿は、ゲームや漫画の世界で描かれる小鬼の姿に酷似していた。
そしてゴブリンを思わせるモンスターを始めとする怪物たちは地上へと現れると世界を壊し始めた。
手に持つ原始的な武器を使い、建物を壊して周り、そして人間を襲った。
ファーストブレイクで最も被害を出したのは俺の住む日本だった。
理由は単純で対抗できる武器を持った人がほとんどいなかったからだ。
かろうじて対抗できたのは銃火器を持つ警官だったが、モンスターが溢れた地域ではその数に飲まれてしまった。
そして超法規的に自衛隊が出動し、大きな被害を出しながらもどうにか掃討することができたが、傷跡は深かった。
その日を境にこの世界はダンジョンとモンスターが蔓延ることとなってしまった。
そして、この時世界では銃火器だけでなくスキルを使いモンスターを倒す人たちが現れ、この日を境にその人たちは人類の剣『セイバー』と呼ばれることとなる。
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