告解室

Y.T

第1話 教会。

 肉の都、マッスルー。

 我が国随一の筋肉都市である。人々と筋肉が触れ合い、支え合い、共存する、とても素晴らしい街だと僕は思う。

 ここは教会だ。

『————骨格とともに、筋なる肉の栄光の内に——マッチョメン』

「鍛えましょう——」

 筋束の祈りが終わりを迎え、次は集会鍛錬が始まる。司祭様が見守る場で会衆達がトレーニングをするのだ。トレーニングメニューは曜日によって定められ、今日は胸の日、である。正しいフォームで適切な荷重、適切なレップをこなす事により我々は、肉の御名のもと、救われるのだ。

 それが終わると筋書の朗読が始まる。ありがたい肉の言葉の一節を司祭様が唱えてくれる。

 しかし、その言葉を聴くよりも、優先すべき義務を持つ者たちがいた。肉の内に、罪を抱える者達である。

 その者達の告白を聴き、肉体を通して筋肉のを与える——それが助祭である僕の役目だ。


 内に僕を宿したこの箱はそう、告解室、である。

 聖人マッスラー達の汗が錆びとなり残るこの鉄の小部屋で僕は、つみびと達を待つ。

 

 

 

 

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