第32話・1 キク・カクタン国
船が着いたのはキク・カクタン国と言う名の国でした。
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王の使いとやらの船に乗ってその日の内に港へ着きました。どうやら目的地のすぐ近くまで来ていたようです。
日も高く、船では食事も出なかったのでまだ昼7前(午前中)なのかもしれません。
河口に在る港に停泊した船から、小舟に乗せられて桟橋に上陸した。そこには2台の輿が用意されていて、輿に乗る様に身振りで示されたので、しぶしぶ後ろの輿へ連れていかれ、中の椅子に座りました。
輿は前後4人づつの8人で担ぐようだ。ただ台の上に担ぐタイプでは無くて、座った腰から下を吊り下げる形をしている。
前の輿に乗った王の代理人が声を掛けると行列は進み始めます。私の輿も持ち上げられゆっくりと進み始めます。輿の左右に腰に剣を刷いた男らが数人護衛として付いて来ます。
乗ってみて分かりましたけど輿は結構揺れますが、ガタガタとは揺れずにゆらゆらと左右に揺れるため乗り心地は良いけど、酔いそうです。私に船酔いなどは関係ありませんが、この輿に乗る人は慣れが必要だと思います。
王の使いの船では、お世話役だったアーシャとシーリーンは前の船に残りましたので、一人で部屋に閉じ込められていました。
久しぶりの一人だったので、腕輪の
このまま
かと言ってこのままこの場所に閉じこもっていても船の中なのは変わりません。逃げるなら海から上がった後が良いでしょう。ついでにトイレに行ってこれから何があっても大丈夫な様に備えます。
輿に乗って、王都と思われる都市を進みます。輿の周囲を薄い生地で囲って、天井は板を布でくるんだ作りになっています。日が強く射しているので日よけと外から中の人を見られないようにする為でしょう。
中からは薄い生地越しに町の中が見えます。大きな通りの両側に日干し煉瓦で作られたと思われるレンガを積み上げた建物が並んでいます。屋根は雨が降る時は大雨になるのか、板状の陶器に見える物で拭いた作りになっていますが、雨どいの様な物は見えません。
店の前から中まで売り物と思われる品物を積み上げていて、なかなか商売が繁盛しているようです。でも女性の姿が少ないのは家の中に囲い込まれているのでしょうか?
それどころか、子供の姿も見えません、せいぜい12,3才から上の男の子が走り回っている姿を見かけます。彼らは遊んでいる感じでは無く、お店の手伝いをしているようでした。
町中は真っ直ぐな通りは無くてグネグネと曲がりくねった通りがいつまでも続きます。通り沿いの家々の高さは2階建てぐらいです。路地や通りの交差点では横に広がりを持った作りが見えるので、奥行きのある家の様です。
所々に広場の在る交差点になっていて、其処から見える通りの全てが同じような繁華街に見えます。港からの通りは商店街が続いているので、繫栄している都市のようです。
やがて輿は王城の門と思われる大きな門を潜りました。港で輿に乗ってから4コル(1時間)ぐらいでしたので、意外と港から近い場所に王宮が在るのですね。
中は一転して広い通りの両側に人の高さほどの塀で仕切られた家々が並んでいます。邸宅と言って良い家は全て1階のみで屋根も切妻屋根に陶器の瓦が敷き詰められた、貴族か王家に仕える官僚の家なのでしょう。ひょっとしたら宗教国家と聞いているので、みんな宗教関係の人なのかもしれないですね。
いつまでも続く広い通り沿いの家々を延々と歩きます。庭に植えられたナツメなどのあまり高くならない木々と1階のみの家々。通りも広く太陽に照らされた通りに日陰を作る街路樹、中々解放感があります。
先ほど通った町中のごちゃごちゃした通りから、王宮の広い通りは人も少なく広々としています。ただ同じような景色なので、見飽きる程の時間がたってもまだ続きます。輿の担ぎ手が門で交代してから2コル(30分)ぐらいは経っているようです。いい加減疲れた頃、次の門が見えました。最初の門もこの門も東向きなので、どうやら王城の中を一周していたようです。
担ぎ手や護衛が門で入れ替わっているので、王宮内に入れるのは限られた人だけなのでしょう。今度の門は豪華な装飾と燃える様な炎を象った彫刻が、門の両側から天辺までを覆っています。さながら炎獄の門の様です。この門が王宮の中心部分への入り口なのでしょう。
門を潜ると水路で区切られた建物が幾つも在り、更に奥は木々と池が在る良く分からないエリアに入ってしまいました。私を担いだ輿は鹿が放牧されている庭園の中を奥へ奥へと移動し続けます。いったいこの王宮の広さはどの位あるのでしょう?
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次回は、王様とラーファ。
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