第23話 巨悪犯罪組織は官僚天国

 犯罪組織の実態は王都に巣くう官僚の集団?

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 第2城壁内に住む下級貴族への、使い魔を使った調査は進みました。しかし、思っていたよりも遥かに規模が大きくて、犯罪者組織の関与する施設が多かった。


 ここは王都と違って貴族の屋敷の中は独立国の様な物で、国法は在りますがよほどでなければ手を出せません。そのため堂々と違法な施設が運営されています。


 調べる内に、貴族の家を中心に其の使用人や出入りの業者まで犯罪組織に何らかの形で関与していた。その全てが王都の運営に関係する貴族で、タイニードラムス侯爵の派閥だった。その浸食範囲は第2城塞内の貴族の実に30家以上に及んでいた。

 ほどんどが男爵や子爵の家だけど中には伯爵家や侯爵家の親族までいる。戦争で新しく貴族となった新興貴族や近衛兵などの一部を除き、影響の無い派閥内の貴族の家を探す方が難しいぐらいだ。


 ここまで簡単に調べが進んだのは使い魔の能力もさることながら、各組織が帳簿で管理され上部団体へ報告する義務があるのが主な原因です。

 作られた彼らの帳簿の中には顧客名簿なども在り、名簿を調べる中で色々分かって来た。


 第2城壁内の貴族の子弟は多くが麻薬の常習者になっていて、違法な競売や賭博場へ出入りしている。当主が麻薬に手を出している事は少なかったけど、競売などへの参加は普通に行っていた。違法状態が常態化していて罪悪感が薄れているのでしょうか。


 第2城壁内には王都の中に置けない様々な施設や工房、倉庫などが在りました。人身売買の商品ひとを入れる施設や、奴隷や密輸品を手掛ける競売所。麻薬の製造や暗殺者の訓練所。


 ここは組織の資金源ですが、中枢ではありません、更に上の組織が存在します。


 中枢があると思える、第1城壁の中への調査は難航しています。第1城壁内は国お抱えの影の組織が見張りとして警戒しています。


 この見張りが魔力を感じるスキル持ちで、使い魔の魔力を不審に感じて調べてきます。何度も見付かりそうになり、撤退する事が続いています。


 そこで一計を案じて8級の笑い猫(迷宮茶縞猫)を使い魔として召喚する事にしました。氷雪のダンジョンに住む非常に珍しい魔物ですが、其の落とす魔石がインベントリを作るのに役に立つのです。


 ラーファが使い魔として召喚できるのは、恐らく生前のイスラーファが使い魔として使役していたからでしょう。死んだとき其の多くを忘れてしまっていますが、おばばとの闇魔術の訓練で、再び思い出せたので使えます。


 イスラーファの目的は推察できます、笑い猫は闇隠ダークハイドの中に住む魔物なのです。


 魔力感知に長けたエルフでも闇隠ダークハイドの中に潜み、出ることなく移動する笑い猫の前にはたやすく秘密を探られてしまうでしょう。笑い猫を使い魔に出来る樹人はラーファ以外に知りませんけど、樹人の王様の中にはいたのかもしれません。


 笑い猫の闇隠ダークハイドで侵入は上手く行き、第1城壁内を探ります。笑い猫は自分の闇隠ダークハイド中に隠れたまま第1城塞内へと簡単に侵入してしまいました。

 調査は王都を管理する国務院を最初に調べようと思っていました。やはり国務院のトップ、内務卿のタイニードラムス侯爵が首領でしたが、どうやら孤立していて派閥が内部で分裂して勝手に動いているとは思いもよらない事でした。


 さらに驚いた事に、国務院の中にある、王都ウルーシュを管理する部門がそっくりそのまま犯罪組織の上部組織だったのです。


 国務院の王都を管理する部門全てが犯罪組織の幹部だったとは、ラーファも思ってもいませんでした。


 彼らは犯罪組織の運営と上納金の分配や組織を利用した犯罪、犯罪の隠蔽を行っていました。今回のラーファへの誘拐未遂で薬師ギルドの議員へ止めろと言って来たのはこの上部組織でした。


 探って行くうちにどうやら、王都管理部門は幾つかの派閥に分かれている事が分ってきました。侯爵の元に纏まって見えるのは各々の利害調整のため侯爵を上に置いているだけの様です。


 彼らはラーファに対して誘拐から暗殺へと方針を変たようです。彼らは組織への反抗的な人物で実力のある者を密かに暗殺する組織迄持っていた。

 ロクサス伯爵と言う偽薬や麻薬の派閥の首魁がニジン子爵と言う暗殺と誘拐を主として行う派閥へカカリ村の魔女の暗殺を依頼する書類が在った。


 『誘拐が失敗したなら、次は暗殺ですか? 王様はいったいラーファに何を期待して公開治療など依頼したのだろうね!』

 『いい加減切れそうなんですけど!!』


 『ラーファどうしたの? なんだかとっても怒ってるみたいだけど』

 『あ! ごめんね、神域で今調べている王都管理部門の記録を整理してたの』

 『それで官僚の腐れっぷりと王様の丸投げ物件について、怒ってたのよ』


 神域から漏れたラーファの念話が魔女学園のマーヤに聞こえた様だ。


 『彼の方の知識だと、腐敗した官僚は派閥抗争が行き過ぎて、外患を引き込んだ内乱になるそうよ』

 『マーヤの言う通り、内憂の隙を外患が突くって感じだね、オウミ国もそうなりそうだよ』


 まさか外患とか引き込んでいないよね? ありそうで嫌になってしまうんだけど。


 『そんな官僚一掃しちゃえば?』

 『簡単にそんなことが出来れば、王様だってラーファに依頼して無いと思うよ』

 『ラーファならできるんだ?』


 王様はラーファにほんとに丸投げしたのかな? 外の勢力を引き込むとしたらロマナムかな?


 『え! ううーん、派閥同士を煽ればお互いに潰し合いになりそうだけど、内乱になりそうだね』

 『先に外患の方を潰すとかしないと、内乱になったら止めようがなくなるわね』

 『やっぱりラーファにも無理だね』


 どう考えてもラーファ一人で対処する事では無いわね。


 『それに、うまく行っても官僚がいなくなれば王都の行政が止まっちゃうしね』

 『難しいみたいね、ラーファなら、男がだめだからって言いそうだね』


 言い得て妙、だね。薬師の評議員なんかあれだけ女性を見下してて、やってることは最低だからね。


 『やっぱり男はだめね、この際女性を登用して女性官僚とかに入れ替えれば腐った官僚を一層できるかもね』


 腐った官僚を一掃出来れば、女性官僚を登用して女性の活躍出来る場所を広げるのも在りね。


 『女性だから腐らないとかじゃあないけど、この国にしても男尊女卑が激しいのは事実よ』

 『ラーファは何時も闘って来たからね、何時か女性が評価されるようになりたいね』


 『じゃあ帰ってから、最初の怒ってた事を詳しく聞かせてね』

 『まぁ良いけど、マーヤが聞いても楽しい話じゃ無いよ』

 『分かってるけど、気になるの、じゃあ後でね』

 『ああ分かった、後で』


 読んでいた、ラーファの暗殺依頼書を片付けると、記録の整理に戻った。


 この組織の管理部門の記録を全て念入りに写しを作り、出来る限り彼らの記録を残す事にした。意外とまめな組織でこれまでの犯罪の記録も残している。犯罪集団とは言え官僚組織は記録し保存する事が本能の様だ。

 ただ保身も在る様で、20年過ぎると記録は破棄していて、それ以上古い記録は無かった。


 不思議なのは、これほどの犯罪集団が、国の中枢に巣くっていて、オウミ国が手堅い国政を行なえている事だ。影の組織を牛耳るアニータの祖父はこの事を知っているのでしょうか、それとも加担しているのか?


 ガランディス伯爵は国務院の補佐ですが、彼は関わっているのでしょうか? 関わっているとなると王様も怪しくなってくる。


 疑惑は尽きませんが、ここまで知ってしまうと国に知らせて捕まえる様な危険は冒せなくなってしまいました。それに、王様と会って公開治療を頼まれた時感じた、王様の裏の目的は間違い無くこの件です。


 そうだとして、王様からどうしてほしいとは言われていません。


 これほど悪辣な組織です、これまで暴こうとした多くの人を闇に葬って来たのは、暗殺依頼書を見ればわかります。身を守るためには戦う事が必要になりそうです。


 王さまから何も言われていないし、勝手にやっても良いと思います。


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 次回は、犯罪組織の全貌と反撃です。

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