第4話 ウルーシュの生活(3)

 王都の紹介を兼ねたラーファとマーヤの現状です。

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 マーヤとの念話でやる気が出てきました。

 念願の庶民でも気軽に手が出る価格帯に魔女の薬を供給できるのです。

 これから頑張って王都の住人へ本物の魔女と魔女の薬を知ってもらうのよ。


 陛下との会談が終わって、やっと王宮から出る事ができた。

 ラーファはアリス侯爵夫人と王都のイガジャ侯爵邸に戻った。

 侯爵の王都での宿泊や宴会が此処で行われるので場所も第一城壁内に広い敷地を提供して貰っている。


 侯爵邸から第3城壁内の市民の住むエリアへは馬車で行っても2コル(30分)はかかる。

 ラーファは、5ヶ月間此の侯爵邸に住む訳ではなく、第3城壁内に在るイガジャ侯爵の関係者が泊まれる町中の下屋敷に住む事に成っている。


 侯爵邸を出る前にここに来る時、気になったアリスの体調の変化を調べさせてもらった。

 竜騎士の皮鎧を脱いで下着姿に成ったアリスに嬉しい知らせを伝えます。


 おめでたでした、まだ男の子か女の子わかりません。

 アリスにおめでただけを告げておおよその出産日を教えます。


 「おめでとう、出産には立ち会えないけどビチェンパスト国から応援するよ」


 「ありがとうございます、教官」

 アリスは涙を流して喜んでいます、結婚して1年妊娠しなかった事を気に病んでいたのでしょう。


 「後2ヶ月もすれば流産の危険は少なくなるから、それまでは飛竜に乗っちゃあだめだよ」

 「それに少なくなるからと言って、無理はしないでね、そして体と体調の変化に気を付けるんだよ」


 厳重に注意しておきます、アリスの事ですからこのままイガジャ領の侯爵邸へ飛んで帰りそうです。

 ラーファが一緒に乗ってれば問題ないけど、当分ラーファは王都暮らしだし、少しはアリスも体を休めた方が良い、連日王都とイガジャ侯爵城館を往復しているのだから。


 この件は王都に住むミンジャスミンにも知らせておきましょう。

 同じ妊娠仲間の知り合いで魔女なら心強いでしょうから。


 王都に派遣されている領兵のダルトシュ竜騎士に明日イガジャ領へ連絡して貰う事に成り、手紙を書くために部屋へとアリスは移動しました。

 ラーファもお暇(いとま)して第3城壁内の下屋敷へ移動します。


 馬車で下屋敷へ移動する途中第1城壁内に在る内政を取り仕切る国務院へ寄ります。

 王様が部屋を出た後、ガランディス伯爵様と言われる方から寄る様に言われていましたから。

 ガランデァス伯爵様は前にカカリ村へ王様の使者として来た時、見た事がある人です。


 王様から指示が在ったのでラーファを手助けしてくれるそうです。


 『イガジャ男爵から魔女を一人王都で開業させる依頼』を王様が暗黙じぜんの了解と言う事で創作したけど、男爵様も恐らくご存じだと思います。

 カークレイ様もラーファに言いにくそうにしていたのでご存じだったのでしょう。


 その事を受けて国務院の補佐をされているガランデァス伯爵様が書いてくれた紹介状を貰いました。


 この紹介状は依頼の内容と「イガジャ男爵の依頼によりカカリ村出身の魔女1名、王都での開業を許可した。」と書かれています。

 そして「国務卿補佐 ガランディス伯爵」の署名があります。

 ですからウルーシュのどの町役場でも、届ければ広場で魔女の治療を公開する許可が出るそうです。


 最初に会った時からガランディス伯爵様はラーファに何か含むところが在る様で、紹介状を渡した後も睨みつけていました。

 『ひょっとしたら、地顔が怖いだけかもしれないよ?』

 マーヤが暇なのか神域からラーファに念話して来ています。


 『そうなのかなぁ? 睨みつけている気がするんだけど?』


 ガランディス伯爵様の命令で騎馬の衛兵が数人、ラーファの乗った馬車が大堀の橋を渡って下屋敷まで行くのに付いて来ました。


 伯爵(ガランデァス)様からは、各町の役人に彼の紹介状を持った魔女を手助けするように、通達してくれるそうです。


 そう言われて、そこまでするような事だろうか? と思う。

 それとも王様の御意向だからそこまでするのかもしれない。

 魔女一人に対して大げさな対応に、きな臭さを感じます。


 『ラーファはお礼を言われた事を忘れているよ』マーヤがあきれた様に念話で伝えます。

 『伯爵は魔女がラーファだと知っているのかな?』

 国務院でもラーファは魔女としか言っていません。


 『カー爺様から聞いた話だと、王様の懐刀なんだって、とっても王様の信頼厚い人らしいよ』

 王様からラーファの護衛か監視を言い遣ったのか知れませんね、お目付け役も兼ねていそうです。


 『ねぇマーヤ、ラーファを影から守っている人とかいるの?』


 『今は居ないよ、2年前は襲われてからしばらくは、少なくても4人ぐらい周りにいたけどね』


 『知らなかったわ、危機察知では守ってくれる人は察知の対象にならないみたいね』


 王都への移住は秘密裏に行われたので、追手の目はけたと思っています。

 ラーファは船が出るまでの5ヶ月間、提供された下屋敷の部屋を使って良い事に成っています。

 ここなら、魔女の一人として活動する分には危険は無いでしょう。


 下屋敷の提供された自室へ入ってくつろぎます、と言ってもラーファは魔女の衣装のマントと飛行服を脱いだだけです。

 ラーファには着替えも魔女のマント以外はワンピースやシャツ、ズボンなどで貴族的なスクマーン衣装はもっていません。

 外着として魔女にはフード付きの白いマントが在りますから。


 スクマーンと呼ばれる正装はラーファも素敵だと思っています。

 王都に居る間に記念に作るのも良い考えかも知れませんね。

 そうだマーヤにも作ってあげよう。 


 今日は飛竜に乗って来たので、服を脱いだ後体を締め付けない白いシャツと青いスカート姿です。

 部屋は暖かく日差しも入るので、上着は着ていません。

 やっとくつろぐことが出来ました、明日から公開治療へ向けて準備しなくちゃいけません。


 神域の家まで帰り、お風呂へ入って裸のままベッドに寝ころびます。

 マーヤは夕食に行ったのか家にはいません。

 ベッドに横に成ると睡魔が襲って来ます、このまま寝る事にしました。


 2刻半(5時間)の飛行と王様との謁見えっけんで今日は疲れました。


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 スクマーン衣装はブルガリアの女性用民族衣装です。

 下に着る白いワンピースの刺繍が色や模様が多彩で目を引きます、エプロンが可愛い衣装です。

 次回は、手続きに訪れた町役場で広場での治療の許可を申請します。

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