僕をとりあう二人の美少女がいつしか……?
夕奈木 静月
第1話
「
今にも消えそうな、か細い声。
「笠原! ゼイゼイ言ってんじゃん。疲れたんならウチがおぶってやろうか?」
反対に
男の僕でもつらい急坂を余裕でこなしている。
「はあはあ……。それなら小百合をおぶってやってくれ。すまない。僕は腰が悪いんだ」
「はあ!? なんで? あたしたちが恋敵同士だって知ってるだろ!?」
たしかにそうだ。この二人は俺に恋心を抱いている。だが、今そんなこと言ってる場合じゃない。医務室は山上にしかないんだ。
「緊急事態なんだ。頼むから……。な?」
まっすぐに朱莉の目を見て頼んだ。
「……仕方ないな」
男顔負けの余裕の仕草で小百合を背中に手招きする朱莉。
「でも……」
小百合は戸惑い、
「気にせず早く乗れよ。遠慮するなって」
女なんだけど、男気ある朱莉の優しさに小百合はほだされたのか、うなずき、その身を朱莉の背中にゆだねた。
「ありがとう。じゃあ、行こうか」
男として情けないが、僕は交通事故で腰をやってしまってから重いものが背負えなくなってしまっている。
そのあたりのことを三人で話しながら、山上までの残りの道程を一歩一歩踏みしめていく。
無事に医務室に小百合を運び込め、軽い脱水症状だった容体はすぐに回復した。
そんな登山合宿から数週間が過ぎたころ。
いままでなにかにつけて僕への愛情比べのようなことをしていた小百合と朱莉の様子がおかしくなってきた。
犬猿の仲だった二人が仲睦まじく話していたりする。徐々に僕に関わることも少なくなってきた。
いったいどういうことだ?
僕は
教室の窓際から外を見つめる二人の所へ行く。すると、
「朱莉さんって、とってもたくましくて、筋肉隆々で、頼れるんです……」
恋をする目で朱莉を見つめる小百合と、
「こいつ、可愛いとこあるんだぜ。つうか、全部が可愛いんだよな」
僕以上に男らしく微笑む朱莉が指を絡ませていた。
僕をとりあう二人の美少女がいつしか……? 夕奈木 静月 @s-yu-nagi
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