第2話
男の子は首を横に振った。
宮島はそれがどちらの意味か判らなかったが、特に気にはしなかった。
午後3時を過ぎ、宮島は缶コーヒーを袋から出して飲む。
飴の袋を破り、その男の子に差し出した。
「僕、食べる?チョコもあるよ?」
男の子は首を横に振る。
「知らないおじさんに貰っちゃ駄目ってママに叱られちゃうかな?」
男の子はまた首を横に振る。
「じゃあ、今さっき買った飴だから、キレイだよ、食べたかったら、食べなね」
宮島は飴の包をひとつ破り、自分の口に入れ、3粒の飴を男の子に手渡す。
「ポケットに入れておきなね」
男の子は2粒の飴をポケットに入れ、1粒の飴を口に入れ舐めた。
そして、初めて宮島に笑顔を見せた。
宮島は何だか嬉しくなる。
子供の笑顔がとっても嬉しい。
「僕は毎日公園に来てるの?」
男の子は頷く。
そしてまた、蟻を見て目を大きく開き、宮島の袖を掴んで蟻を指差す。
「うわー凄いね。あんなに大きな虫、巣に引きずり込むんだね」
男の子は2度頷き、宮島に微笑む。
そして、ポケットからもう1粒の飴を取り出し口に入れた。
宮島の袖を引き、ベンチを指差す。
一緒に並んでベンチに腰掛け、男の子は地面に届かない両足をブラブラ動かす。
「僕、チョコもあるよ、食べる?」
男の子は首を横に振る。
「晩飯、食べられなくなっちゃうからね。ママに怒られちゃうね?」
男の子は頷く。
「じゃあ、ひとかけだけ食べる?」
男の子は少し首をかしげて考えたが、すぐに笑顔で頷いた。
袋から板チョコレートを出して、包を少し破り2粒割った。
「あはは、ふたつ割れちゃった。ふたつでも大丈夫だよね?」
宮島は男の子に割ったチョコレートを手渡した。
「残りは持って帰ってママがいいよって言ったら食べなね」
男の子は受け取ったチョコレートを更にふたつに分けて、ひとつを宮島に差し出す。
「くれるの?ありがと」
ふたりでチョコレートを舐め食べた。
男の子はニコニコと宮島を見ている。
「こうたぁー」
公園の入口から声がした。
男の子はその声の元へ走って行き、笑顔で宮島の方を指差した。
「この子のお母さんですか?今日はこの子に遊んで貰っていました」
母親は不安な表情をし宮島にそれでも会釈をした。
「すみません、この子と一緒に飴とチョコレートを食べちゃいました。この子は最初は受け取らなかったんですが、この子が可愛くてつい、一緒に食べちゃいました」
「あっ!夕飯に差し障ないくらい、少しですよ?」
宮島は続けてしゃべる。
「すみません、私はすぐそこに住んでいる宮島と言う者です。定年退職して時間を持て余し、公園で独りで遊んでいたこの子につい、話し掛けて…決して怪しい者ではありませんので…」
そう言いつつ、男の子に飴とチョコレートの入った袋を手渡した。
男の子は母親の手を握り、宮島に笑顔で手を振り、母親は我が子の笑顔を見て、少し安心したのか、男の子から袋を取り上げ、宮島に手渡そうとする。
「いやいや、これはこの子にあげたものでそこのドラックストアでさっき買ったもので…」
宮島は言い訳じみて、たどたどしく母親に告げた。
「要は、これは新しくキレイな飴とチョコでこの子が食べたら嬉しいかと…」
宮島の態度に母親は笑顔を見せた。
「有り難う御座います。遠慮なく戴きます。航太もお礼して」
航太と呼ばれた男の子はちょこんと頭を下げ、また笑ってくれた。
「明日も遊んでね」
宮島は航太に話し掛け、宮島も手を振った。
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