㉚ 作家とは…

作家とは、いつも率先して時代を走り抜ける人。誰よりも最先端を走りたい。試される時代感覚、繊細な捉え方。今を切り取る力。

作家とは、思いを醸造する棒になれる人。人により思いは様々、反応も様々。書き上げた以上、そこから先は読み手に任せられる。思いを頂いたら魂込めてかき回し、慎重に醸すただひたすらの棒でありたい。

作家とは、珈琲の味が上手く染み渡る人。どんなものにも味がありそれなりの風味、手応えがある。それをしっかり伝えられる抽出家でありたい。

作家とは、壁に向かって問い続けられる人。納得の行く言葉を探して、何度も読み直し、問い直し最上の表現が構築できる人。壁は高ければ高いほど荘厳に響くと信じて。

作家とは、自分と上手く会話できる人。せめて自分は裏切らず、自分に嘘をつかず、 一番言いたい、イメージに近い言葉を見つけ出して思いをやり取りできる人。

作家とは、寂しくて涙を心で流す人。孤独に耐えて、本質を突き止めるために自分を追い込める人にやさしく、自分に厳しい人であれと願う。

作家とは、月に向かって懺悔できる人。敬虔な姿勢で月と対面し心を洗いながら言葉を紡ぐ、自然とともに流れるように何からも学び取れる人。

作家とは、苦さを甘さに変える人。どんなに苦しい毎日もひときわ華やかに優しい気持ちを込めてわかりやすい言葉で綴りたい。

作家とは、鉛筆を削る音を知る人。静かな小さな音にこそ魂があると耳をすませて聞こえるものを探してやまない人。

作家とは、静けさが胸に染みる人。静けさは愛である。人の情けに思いを重ねて共に泣ける共感性の高い人。

作家とは、美味しいものに目がない人。美味しいものは探求心を生まずにいられない。何故かどうして追求すればするほど、より深いものが生まれる。

作家とは、美味しいものが嫌いな人。嫌いなものがある人は心のなかに懺悔が生まれる。申し訳ない、情けない気持ちも文章にできる達人となりたい。

作家とは、自分を置き去りにしたい人。人はどんどん前を行く。負い駆けたくても、ついていきたくても行けないところはある。それが分かっていてもがく人。自分を置いてでも理解しようとする人。

作家とは、人を置き去りにしない人。一人で生きてるわけじゃないから、一人なら言葉は要らない。ともに生きるから解り合うために必要な言葉を、共通言語を手にしたくなる。

作家とは、夢をゆっくり味わう人。自分で欲しがった夢だから、誰にも与えてもらえないし、与えてもらって満足できるわけもない。コツコツと一つずつ、間違えながら躓きながら手に入れる。

作家とは、いつも音が聞こえる人。人によって聞こえるものが違う。音色も高さも低さも違う。漏れ聞こえる自分の音を、聞こえるように伝えたいと願う人。

作家とは、胸が苦さに痛む人。溜め込んだ思いは痛みとなり、やがて形になり、最後に言葉になる。今生まれようとしている言葉…それがまさに想い。

作家とは、ただ有難うと泣ける人。届くもの、響くものは何であれ尊い。日々の中で波のように伝染して伝播して此処に到着するものに感謝を込めて…

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