⑨ 最後の旅
大袈裟だけど、テクテク歩いて行く駅までの20分が好きだった。急ぐと15分。バス通りをバスに追い抜かれないように足早に歩きます。
オシャレなマンションや古いヨーロッパのアパルトマンを思わせるセピア色のテラコッタの壁。
住むならここだな。と、勝手に自分の気に入りにしてみたり。大きなお庭の中にある珍しい植物の写真を遠くから一枚パチリと撮らせてもらったり…
中道を歩くと道路に面して果物の縁台を広げて売っているおじさんのお店があります。つい通り過ぎる事が出来なくて財布を開けます。
農作物の自動販売機でさえやり過ごせなくて小銭を探して購入。私の家の前にもこんな農作物の自販機を置きたいな。ジャムを入れたり、パウンドケーキを焼いたり、好きなものを入れて自販機に出来たら楽しい。
何回か行った蕎麦屋の駐車場。小学校の賑わい。小さなパン屋。歩かないと見つけられないものがたくさんあって、素敵だった。
田舎の我が家の生活は車が必須で、どこに行くのも車。ゴミ出しも多くなると車。近くにお店も無いし、居酒屋もないし、自動販売機もなくて、車に乗らないと何も出来ない不便な所です。
静岡の街は小宇宙。全部が揃っててオフィスも住宅もあって歩いて全部が網羅できる凄い街です。
アピタもケンタッキーもダイソーも、シャトレーゼもコンビニも、お蕎麦を食べに行くのもラーメンをすすりに行くのもお好みを食べるのも天ぷらを食べるのもフランス料理のフルコースだって全部歩きで、私たちはこの3年弱、歩いてお酒を飲み、徒歩圏の近所を闊歩したのです。
普通、二人が共にお酒を飲むのはNG。どっちかがシラフで帰りの運転を引き受けなければならない。不自由な日々。
この旅とも今日でお別れです。滞在型の素敵な長い旅でした。
平成30年3月31日
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