素敵女子

黒羽冥

第1話素敵女子木戸さん

俺の名は大和鋼太郎やまとこうたろう

こんなめちゃくちゃ力強い名前ではあるが生まれつき病弱で身体も弱かったのだ。

だけど俺が幼い時に亡くなった父親は物凄い筋肉で身体は鋼鉄のように頑丈で。

よく俺が小さい時から身体はいつか父のような立派な身体になれるからと言われてきたんだ。

でも…父親は亡くなった……身体はとても頑丈でよく人助けをしていた父親だったが…車に轢かれそうになった子供を庇い自分は跳ねられ死んでしまったんだ。

俺は以来…そう…あれは小学校に入る前には……身体を鍛える事など…やめてしまった。

俺は小学校中学校を卒業し…現在高校生。

生来の姿…ひょろひょろだけど昔よりは病気もしなくなり普通の生活をおくっている。

そんな俺にある時一筋の光が舞い降りたのだ。

同じクラスになったクラスメイトの『木戸柔音きどやわね』学校一の美人…性格もよく人に好かれるタイプだ。

彼女の事は一目惚れだ。

だけど俺は全てが普通で何一つ彼女に誇れるものなど無かったんだ。

「せめて…俺だってあの…親父の血を受け継いでるんだ…」

かつての俺の親父は本当に人を守れそうなくらいの筋肉マッチョで…あの逞しい身体は俺も幼い頃はやはり憧れていたのである。

『いいか…お前は俺の血をひいてるんだ…実は俺のこの筋肉は我が家に遙か昔から代々受け継がれる『超筋マグナマッスル』と呼ばれ人を助ける為の筋肉を我が一族は昔から受け継いできたのだ…お前はまだ小さい…今はひょろひょろだが…いつかその筋肉は目覚めるハズだ…世の為人の為に使うのだぞ。』

俺は親父が昔から言い続けてきた台詞をふと思い出していた。

「ふん…今までそんな力なんて出てきた試しはねぇぞ…昔から何をやっても平均的な俺だ。そんな筋肉なんてある訳ねぇだろ。」

俺はそう言うと学校からの帰路についたのだった。

俺がいつもの様に街中を歩いていると路地の方からふと聞き覚えのある声が聞こえてきたのだ。

「嫌です!離してください!」

「おうおう…そうはいかねぇな……兄貴のスーツをアイスでこんなに汚しやがってよう!」

(ん?なんだ?女の子の声がどっかで聞いたような…。)

俺がふと影からそちらを見るとそこに居たのは…そう…俺のクラスメイト…『木戸柔音きどやわね』だったのだ。

これは俺が何とかしなければ!!

そう思ったのだが喧嘩なんて一度たりともした事はない。

だがこの状況…彼女を助ける事が出来るのは今俺だけだ!!

恐れからくる震えを感じ…だけどこの震えはそれだけでは無い気がした…彼女にあんな恐怖を与えているあのゲス共に激しい怒りを感じずにはいられなかった。

俺は全身にゾクゾクっと身震いを覚えると…身体は勝手に動いていた。

「やめろ…。」

「なにぃ?てめぇは何もんだ?俺達はこの辺りを仕切ってる者だが俺様達になんか文句でもあんのか?ああっ!?」

俺の胸ぐらを掴む男…そして罵声を浴びせてくるこのゲス野郎。

俺の全身の筋肉は硬直…そして徐々に熱を帯びてくる。

その熱は筋肉を次第に巨大化し硬くそして大きく…みるみるうちに俺の身体はマッチョ体型に変化したのだ。

「なにっ!?貴様一体……」

男が言葉を続けようとした瞬間。

俺の筋肉に覆われた身体が勝手に動き出す!!

バキッ!!ドカッ!!

気がつくと俺の筋肉マッチョの身体は男達を殴り気絶させていたのだった。

「ふぅぅぅ………。」

地面に気絶し倒れている男達を背に俺は彼女を見つめていた。

「えっ?貴方ってもしかして……?」

「えっ?ああ…俺は鋼太郎…大和鋼太郎だよ。」

すると俺の筋肉は徐々に萎んでいく。

「本当だ…鋼太郎君だったね。」

彼女の言葉に確かにいつもの自分を思い返すと彼女にとって俺はあまり印象が薄いだろうとしか思えなかったのだ。

「木戸さん…無事でよかったよ!」

「ええ…助けてくれて本当にありがとう!」

俺達は顔を赤らめながら照れていた。

すると彼女の背後で伸びていた一人が目を覚まし彼女を後ろから羽交い締めにする!!

「て…てめぇら!!もう許さねぇぞ!!」

そして彼女の身体を強引に締め上げようとした瞬間の事だった。

彼女は男の腕を強引に引き離すとその腕を掴み男を投げ飛ばす!!

「「な!なにいいいっっ!!??」」

その瞬間!俺と男の声が被り叫ぶ!!

ドガッ!!

「ぐふっ!!」

男の身体は地面に叩きつけられ気絶してしまったのだ。

その光景を呆然と見ている俺に彼女は声をかけてくる。

「ねぇ…鋼太郎君!?」

「は…はい?」

「私達…何だか気が合いそうね!」

そんな彼女はムキムキの筋肉を持つゴリラ女…もとい…素敵女子…だったのだ。

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素敵女子 黒羽冥 @kuroha-mei

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