好き…かも

春乃は駿太から一方的にキスをされ、それを孝司に見られてしまった。


そして、次の日から、孝司は春乃の家に来なくなった。

孝司が来ない日が続く度、春乃の不安は募っていった。

こんなことになるなら、駿太に自分の気持ちを丁寧に話して、うまく別れてたら良かったのにと後悔していた。



孝司が学校から帰ると、家の前に春乃がいた。

「春乃。どうしたの?」

孝司は駆け寄った。

「もう…来ないの…?」

「え?」

「うち…」

「え、いや。期末テストだから。2週間くらい行けないって…。湊君に話してあったんだけど…」

「え?」

「聞いてなかった?」

「うん」(お兄ちゃんのやつ〜)

「直接言えば良かったね…。ごめんね」

「…ごめん」

春乃は知らなかったとはいえ、孝司の家まで押しかけた事が恥ずかしくなった。

「じゃ、勉強頑張って…」

春乃が行こうとした。

「待って待って!」

「え?」

「せっかく来たんだから、上がってきなよ」「だって勉強…」

「いいの。まだテストまで時間あるし。おいでよ」

孝司は、笑って言った。

「うん…」

2人は家に入っていった。


「久しぶりに来た…」

「そうだよね。お茶入れてくるから、部屋で待ってて」

「あ!いいの!すぐ帰る」

「じゃ、よけいお茶出さなきゃ」

孝司はお茶を取りに行った。


春乃は久しぶりに孝司の部屋に入るのでドキドキしていた。

相変わらず、昔2人で撮った写真が飾ってあった。

お茶を持った孝司が部屋に入って来た。

「はい」

春乃にコップを渡す。

「ありがとう…」

「うん」

2人は床に腰を下ろした。


「ね…」

「ん?」

「私の事、嫌にならないの?」

「何で?」

「駿太に…キス…されたの見て…」

「あの…」

「…何?」

「別れたなら、下の名前で呼ばないで」

「あ、ごめん…」

「で、嫌にならないよ」

「来ないから…」

「ん?」

「テスト勉強で来ないって知らなかったから…。もう嫌になったのかなって…」

「嫌にならないって」

孝司は笑って言った。

「もう…好きじゃなくなったんじゃないかって…」

春乃はうつむく。

「好きだよ」

「…」

「春乃さ…、それ、俺の事好きな場合の聞き方だよ?」

孝司は笑った。

「……」


「好きなの?」

孝司は今度は真面目な顔になった。

春乃は動かなかった。

「ねぇ…」

「…」

「ねぇって」

春乃の顔を覗き込む。

下を向いてる春乃の顔が赤かった。

「ねぇ…言って」

「孝司ってたまにすごい強引」

「うん…」

孝司は春乃の顔を見つめた。

春乃も孝司の顔を見た。

「好き…かも」

「かも?」

「もう、追い詰めないで」

春乃は顔をそむける。

「俺は、春乃が好きだよ」

孝司は、春乃をじっと見る。

「…私も…好き」

春乃は顔を上げると孝司と目があった。

「嬉しい…」

孝司は少し涙目になりながら、そっと抱きしめた。

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