幼馴染の恋 16歳 〜エピソード2

Nobuyuki

10年の片思いがやっと実った幼馴染カップル。まさかの別れ!

中3の時、10年の片思いがやっと実って付き合うことになった、孝司と春乃。

ハッピーエンドで、終了するはずだったのに、高1の冬、孝司と春乃は別れた。


1ヶ月くらい前に、孝司は春乃から別れを切り出された。

孝司が取り憑かれたかのように勉強して、春乃と会う時間がなくなっていったからだ。

会うのは月に数回。

春乃の不満は爆発していた。


「もっと会いたい…」

「うん…」

「ホント?会う時間増やしてくれる?」

「…ごめん…」

「…なんで…?」

「パブロ兄ちゃんみたいな医者になりたい」

「うん…」

「パブロ兄ちゃんみたいに、学校の成績も一番になりたい」

「…」

「学年1位って肩書あると、春乃の隣に堂々といれる気がする」

「そんなのいらない…」

「…」


「毎日寂しい…」

「ごめん…」

「この苦しみから逃げだしたいって思っちゃう…」

「…春乃…」

「もう…。付き合うのやめたい…。そしたら何も期待しなくていい」

「…」

「何か言う事ないの?」

「俺は勉強やめれない…。やめて、救える命を救えなかったら後悔する…」

「わかった」

「でも、春乃…」

春乃は、孝司がまだ何か言いかけてるのを聞かず、走って行ってしまった。


「…好きだよ」

春乃に言いたかった言葉をつぶやいた。



パブロとは、姉・絵理の彼氏で、医者である。

学生時代のパブロは、一日中勉強して、成績も常にトップ。

その膨大な知識のおかげで、事故で死にそうになった孝司を、タブーをおかしながらも、救けてくれれた過去がある。

自分の夢も、好きな人を失う事も、知っていながら。

孝司も、同じように、命の危険がある人を救いたいと思っている。

パブロのような医者になるために、猛勉強するのは、孝司の人生にとって、必要不可欠だった。

そして、パブロのように学年成績1位を取り続ける事も。


孝司が死にそうになった時の説明が難しいので、春乃には詳しい話はしていない。

(詳しくは、"同居人は魔法使いで意地悪で好きな人〜エピソード0"参照 同作者)


そのこともあり、春乃は、そこまでやる事の意味が分からなかった。


春乃は別れる少し前から、クラスの男子の中野駿太に相談していた。

席が近く、なんとなく孝司の事を話してしまった事がきっかけだ。

意外と話やすくて、ずっと相談にのってもらっていた。

駿太は柔軟で、重い相談も軽く受け止めてくれた。

余計なアドバイスがないのも、春乃にとってありがたかった。


「俺と付き合ってみない?」

駿太はサラッと言ってきた。

「…私、まだ、元彼の事ひきずってるよ?」笑いながら返した。

「別にいいけど」

「いいの?」

また、笑った。

「中野君のこと、好きじゃないけど?」

「うん」

「何で?」

「一緒に帰ったりしたいから」

「友達でも帰れるじゃん」

「気分が違うでしよ?」

やり取りが少し孝司ににてて、嬉しかった。

「いいけど…」

(高校は男子にあまり告白されたくないし)

春乃は、美人でとにかくモテる。

中学時代は、20人くらいに告白された。

駿太と付き合えば、それがなくなるかもしれないと思った。


「いいの?」

「何もしないでね」

「…」

「黙るな」

春乃は笑った。

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