筋トレ系Vtuberとコラボ配信 1

 ちょっと話題になった、せりのゲーム配信から1週間が経った。せりはまだ少し落ち込んでいる。本人的には、「カワイイ」ではなく「ゴリゴリ」でバズったのが気にくわないらしい。実際、せりはマッチョというわけではない。確かに、一般的な女子と比べれば背は高く短い髪で筋肉質だから中性的ではある。胸も小さめサイズだ。けれども、決して筋肉だらけというわけではない。贔屓目で見て、せりを見て10人中7人は美少女と言うだろう。実写なら、そういう風に言われることはなかっただろう。まぁ、これはバーチャルの弊害だな。

 

「せりー、ご飯できたよー。」

 僕は、1階からせりを呼ぶ。反応がない。いつもなら、すぐにバタバタと階段を降りる音が聞こえるのだが……。寝ているのかな……。

「せりー!せりー!」

 まだ反応がない。ぐっすり寝ているようだ。僕は、2階のせりの部屋に行く。そして、せりの部屋の扉をノックする。

「せりー。起きている?入るよ?」


 部屋に入ると、せりは床にしっぽりと正座していた。寝てはいなかったようだ。いつものせりとは雰囲気が違う。何というか、やけにおとなしい。というか、なぜ正座なんだ。なんか悪いことでもしたのか?

「せりー?」

 後ろから声を掛けるが反応がない。ますます、不穏だ。何か良くない話でもされるんじゃないか。それとも、体調でも悪いんじゃないだろうか。

「せりー!おーい!」

 僕はせりの肩を叩いて体をゆする。

「キャ!あぁ、たっちゃんか……。」

 やけに元気がない声でせりは答える。僕も嫌な予感がして緊張してくる。

「……せり、何かあったの?」

「……たっちゃん。」

 せりは泣きそうな声で言う。いよいよ不安だ。

「……たっちゃん、これ見て!」

 せりはやっとこちらを向いた。泣きそうな顔だ。そして、彼女はおもむろにスマホを差し出す。まさか、炎上でもしたんじゃないだろうか。僕は恐る恐るスマホの画面をのぞき込む。どうやら、SNSアプリのメッセージ画面のようだ。

 

『コラボの依頼

 

 月見 セリ 様 

 

 はじめまして。

 私はカラーパレット所属Vtuber、焔あかりと申します。

 さて、単刀直入に申します。

 先日の配信アーカイブ拝見いたしました。

 すごく面白くて、筋トレに興味が出てきました。

 そこで、ぜひコラボさせて頂きたくご連絡いたしました。

 もし、よろしければ、一度打ち合わせの機会を頂きたく存じます。

 ぜひ、ご検討宜しくお願い致します。


 カラーパレット

 焔 あかり』


 僕は言葉を失った。

 

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