MUSCLE×筋肉×muscle

さいとう みさき

ハイ、ポーズ!


 あるジムで少女が告白をした。


 しかし恋は実らず彼女に残ったのは相手の気を引こうと鍛えたボディービルダー体形筋肉だけだった。


 それは年頃の少女としては可愛い制服も流行りの服も似合わない、筋肉を鍛えるために紅いもタルトもタピオカジュースも我慢してひたすらプロテイン食に徹すると言う過酷なものであったにもかかわらずだ。


 しかし因果なもので失恋をしても習慣で筋肉を鍛えることはやめられなかった。




 河原で沈む夕日に彼女は腹いせに近くの小石を蹴る。

 すると運悪く小石が河川敷で喧嘩をしていた不良にぶつかる。



「痛っ、誰だ!!」


「あん? 何だあの女は、気色悪ぃ姿じゃねーか!?」



 不良の二人は彼女を見てあざ笑う。

 彼女の容姿はJK女子高生として異様であった。



 恥ずかしい。

 こんな体になってしまった自分が。



「笑えるぜゴリラが制服着てらぁ!」


「よくそんな格好していられるぜ!」


 二人は彼女に容赦なく罵詈雑言を浴びせる。

 こんな姿になっても心は乙女、彼女はその言葉にその場に泣き崩れる。




「お、お前たちお姉ちゃんをいじめるな!!」



 しかしそこへお隣さん家のたっ君十二歳が割って入る。


「何だこのガキは、邪魔だ!」



 ドンっ! 



「たっ君!」


 少年が突き飛ばされるのを見て彼女はその筋肉マッスルパワーを解放する。



「たっ君に何するのよぉッ‼︎」



 バキッ!



 ビルダーの筋力を侮ってはいけない。

 何故ならウェイト百二十㎏を軽々持ち上げられるのだ!


 嘲笑した不良どもは星となり、彼女は少年の元へ駆け寄る。



「たっ君しっかりして!」



「お姉ちゃんよかった......  僕ずっと好きだったんだ。お姉ちゃんはいつも輝いていて.......」


「えっ/////」



 その告白に頬を染める彼女。

 しかし少年は輝く目をして彼女の上腕二頭筋を見る。



「だってこんなに凄い筋肉なんだもん!!」



 少年は素直だった。

 彼女は落胆する。




「たっ君まで筋肉なのっ!?」




 彼女の筋肉受難は続くのだった。

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MUSCLE×筋肉×muscle さいとう みさき @saitoumisaki

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