17 Keigo.side


目の前の愛しい顔が、絶望か、不安か、恐怖か、とにかく何かマイナスな感情で歪んだ。


真さんは、そんな顔、一度も見せたことがない。


キスをする時、いつも照れ臭そうに、幸せそうに笑って…






そこまで考えて、俺は漸く現実の残酷さに気がついた。






あぁそうだ…そうだった。


真さんが、俺のもとに帰ってくるはずなんてなかったんだ。


俺が真さんだと思い込んでしまったのは、そう思い込ませるようにしていたのは…マコだった。


自分を犠牲にしてまで、俺に真さんの幻を見せてくれていたのは…マコだったんだ。








「マコ!!」




マコは、家を出て行ってしまった。











すぐに探しに行ったけど、とうとう朝まで見つけることは出来なかった。


それから、毎日探しに行っているけど、一向に見つからないし、帰ってくる気配もない。


もし、犬の姿に戻ってしまったのだとしたら、この広い都会の中、マコを見つけ出すのは至難の業だろう。








マコがいなくなってから、俺の生活は、真さんを失った頃の生活に、逆戻りしてしまった。


ただ何の意味があるのかわからないまま仕事に行って、食べ物の代わりに酒を流しこんで、夜になれば、マコを捜しに街を彷徨って…






だけど、何日か経って、マコを捜すということにさえ俺は疑問を持つようになった。






俺は、マコを傷つけたんだ。


もしかしたら、怖がらせてしまったかもしれない。






元は犬だったマコにとって、多分俺は…親のような存在だったはずだ。


そんな人間に、いきなり、恋愛の対象として見られたら、それは…恐怖以外の何物でもなかっただろう。






もう、帰ってきてはくれないかもしれない。






俺はまた、大切な人を、失ってしまった。





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