5


ドアの隅に、蹲る何か。




それは、震えている子犬だった。




真さんの髪の色に似た、焦げ茶色の毛をした子犬。






「………」




まさか…あの時の?


いや、そんな偶然あるわけがない。


ただの、似ている犬だろう。




インターホンを押した人間が、ここに置いていったのだろうか?


一体なんのつもりだ?




文句を言って突き返してきてやろうと思ったが、どこの部屋の住人が置いていったのかも、そもそもこのマンションに住む人間の仕業かどうかもわからないし、何の関係もない人の部屋にこんな時間に尋ねるのはそれこそ失礼だろうと思い、今日のところは諦めることにした。











取り敢えず、酷く震えているその子犬をそのままそこに放置することは出来ず、家の中に入れて、毛布で包んでやった。


淡いクリーム色の毛布の中で寝息を立てているその犬は、やっぱり、見れば見るほどあの時の犬に似ている。




あの犬…そう言えば、腰の辺りに特徴的な模様があったような…






その模様を確認しようと毛布を捲った時、強い光が目に突き刺さって、思わずぎゅっと目を瞑った。






そして再び目を開いた時、俺の目に飛び込んできたのは、信じられない光景だった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る