3


家に帰ってからも、俺はあの犬のことが忘れられなかった。


もしかしたらあれは…そんな虚しいことを、考えずにはいられなかった。






どんな姿でもいい。


真さんが、俺のもとに帰ってきてくれるなら…。








だけど、散々考えてから、やっぱりそれはとんでもなく馬鹿げたことだと気付いて、酒を煽った。






あの犬が真さんの生まれ変わり?


そんなこと、あるわけない。


真さんは………






真さんは、死んだんだ。


もうどこにもいない。


二度と会えない。


いい加減、認めるべきだ。











真さんが死んでから三年。


俺は、生きる意味を見失ったまま生きてきた。




何のために仕事をして、何のために食事をして、何のために呼吸をするのか…わからないまま生きてきた。






だって、それは全部真さんのためだったから。


俺は、真さんのために…真さんのそばにいるために、生きていたから。




真さんを失った後の世界を生きる意味が、俺にはわからなかった。



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