変わりゆく肉体

りり丸

変わりゆく肉体

 私、愛と亮は中学生からの付き合いで高校も一緒になった。

 部活動も水泳部で話も合い、お互いに好意がある。

 私は今プールに入りスイスイと体を動かしている。

 昔に比べたら泳げる距離も長くなり、そして速くなった。

 泳ぎ終わりプールサイドに座ると、次に亮がプールサイドに立った。

 その腹部や腕は鍛えられ筋肉がついている。

 彼は周りに人がいなくなったことを見てから中に入り、泳ぎ始めた。

 男女別で部活動は行っているもののプールは一つなので思いやりと譲り合いが必要である。

 幸いにも人数も少なめの部活動であるためトラブルは少ない。


「かっこいい……」


 時間的にもこれで最後の泳ぎであるから彼に注目する。

 泳ぎの速さはもちろん、力強さが私と全然違う。

 男女で体格は違うから仕方がないのだろうが、ちょっと悔しい。

 泳ぎ終えたようで亮はプールを上がり、私の座っている場所へ歩いてきた。


「お疲れ様。早かったね」

「おう。頑張りましたよ」


 プールを見回し誰も見ていないことを確認する。


「亮」

「うん?」

「触ってみていい?」


 そう言ってから、彼の腹筋と胸筋を優しく触った。

 男性的な筋肉は固く少し強く押してもびくともしない。


「筋肉ついていいな~」

「そう?」

「中学生のころから比べたらさ、亮はがっしりしたし、骨とかもしっかりしてるから」

「そりゃあね」

「私は成長するにつれて脂肪がつきやすくなってきてさ、丸みが増してるよね。やっぱり多少は筋肉が欲しいなぁ~。少し食べるの我慢しようかな」


 自分のお腹を触りながら願った。

 亮は私を凝視してきたので、おしりをポンと優しく叩いて言った。


「どこ見てんのさ?」

「いや、いや。やっぱり、性別の差はあるから。体つきは違ってくるよ」

「むぅ。でも、もう少しシュットしたいね。亮のおしりはこんなに発達してキュッとしているのに、私は大きくなる一方だよ。亮はこんな私でも好きでいてくれるの?」


 悩んでいることで私は舌を向いている。

 彼は私の頬をつついてからこういった。


「好きだよ」

「本当に?」

「まぁ、愛が悩んでいることも分かるけど。それは少しずつ大人になっているということだからさ。愛は綺麗だよ」

「そ、そう?」


 突然そんなことを言うから顔がすごく熱くなったが、嬉しい。


「無理に痩せたいとか思う必要ないよ。もっと成熟して、綺麗になった愛を見たいよ」

「じゃあ、もっと筋肉を熟した亮に守ってもらおうかな?」

「任せとけ」


 亮は腕に力こぶを見せて笑った。

 高校生という心身がより成長していく時期。

 我慢する必要はないし、極端なことをする必要もない。

 さっきまであんなに羨ましかった筋肉は今はそうでもない。

 悩むこともたくさんあるけれど、大人になった自分たちを見ることも楽しみ。

 彼にはもっと大きくて強い筋肉を付けて、私を包み込んでもらう。

 私は筋肉と脂肪のバランスを整えて、彼にもっと綺麗で美しい姿を見てもらう。


「さぁ、着替えて帰ろうか。帰りに肉まん食べよ~」

「俺はあんまんだな~」

「ピザまんも食べようかな。半分半分にしよう」

「食い過ぎだ」

「亮はもっと食べたほうがいいよ」


 もう一度亮の腹筋を手のひらで触る


「そうか。じゃあ食べるかな」


 私たちはプールサイドから立ち上がり、笑いながら並んで歩く。

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