怪しい古本屋の魔法書

矢斗刃

怪しい古本屋の魔法書

俺はその本に惹かれて手に取っていた。

開いてみると何かの魔法陣が刻まれていた。


「かっこいい!」


俺は溜めていたお金でこの本を買うことにした。


「あんた読めるのかい?まぁいいか。」

お金になるならいいと思ったのかもしれない。

おばばはその本を手放した。


それがどういう本なのかわからずにいる。


「読めない。」


文字は既存の物ではなく。

何かしら暗号みたいに書かれている。

ガキの俺はその解読に昼夜を問わずに熱中したが・・・

まったくの足掛かりもつかめずに投げ出す事になる。


そしてその日、俺はこの本を投げた。


流石に文句をいいに恐そうなおばばに文句をいいに行ったが。


「そんなの坊やがまだまだだって事だよ。」

「えー。」と抗議の声をあげる。


「その本は魔法の本なんだから、わけもわからず手に取ってるんじゃないよ。なんなら今なら、無料でその本をもらってあげるからね。」


古本屋のおばばがそんな事を言う。


辺りにキセルの煙が漂い煙い。


「そこまで言われたんじゃ、読まないわけには行かない。」

ただ、おばばを見返したかったのかもしれない。


俺はその日から、さらなる研鑽を詰んでいく。

そしてわからないと投げ出して寝た日。


ある夢を見た。

それは異世界で魔法を使って冒険をするファンタジーの世界。

そして俺はこの現実世界に帰ってくる。


「よし、これだ!」

決意を持っておばばの所に行ったがそこにおばばの古本屋はなかった。



「?」とまるでそこに古本屋さんはなかったかのように消えている。


隣の叔父さんが出てくる。


「おう、この辺で遊んでた子だろう。今日はどうした?」


「ここにあった本屋さんは?」と俺は聞く。

「本屋そんなものなかったぞ?」隣の更地を見ている男。


「なぁ知らないよな。」奥さんにも聞いてくれている。

「知らないわね。どこかと間違っているんじゃないの?」と俺に聞いてくるが・・・


「確かにここにあったんだ。」

「そんな本屋ここにはなかったわよ?」と不思議そうに言ってくる。


「嘘だ!」と言って恐くなったのか、俺はこの場所から逃げ出した。



恐くなって布団に包まって寝ていた。

俺はあの本を抱いて寝た。


そんな俺の夢の中におばばが現れた。

「あんたのおかげで元の世界に帰って来れた。礼を言うよ。」とか言っていて意味がわからない。


「ふふ、わからないみたいだね。」

「その本は返してもらうわね。」と俺の抱えている本を取った。


「ちょっと俺のお金は?」と聞いた。


「ふふふ、それはきっといつかお前に帰ってくる。その時を楽しみにしているんだね。」


納得はしていない、だがおばばを見返したと思った。

「まぁいいか。」


俺を撫でてくる。

「さよならだ。坊や。もう会うこともないだろう。」

「そうか、またぎゃふんと言わせたかったぜ。」

「ああ、ぎゃふんとなったさ。元気でな坊や。」

「そっちもな。」



そして俺が抱いて寝ていた魔導書は消えていた。


それからは夢を見なくなり、普段通りの生活が俺を待っていた。


ただ面白くない日々を寝て過ごすだけのそんな毎日。


今頃おばばは何をしているんだろうか?

俺にはわからない。

けど研究した成果を再び、いつか使うこともあるかもしれない。


「また会おうな。」と俺は模写した本を一冊持っていたのだった。

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