俺だけが使える『相手の筋肉量を落とす』魔法はどうやら最強らしい??

神白ジュン

第1話 今のところ追放されずになんとか頑張ってます

 「ダウナオール!!」


 俺の魔法を受けた魔物が、一瞬にして動きを鈍らせる。多少なら動けはするが、攻撃に移ることはおろか逃げ出すこともほぼ不可能だ。何故ならこれは単なる弱体化魔法ではないからだ。

 

 いつも通り敵の魔物をこれで弱らせる。そこを味方の剣士や魔法使いたちが確実に仕留めていく。これが今のパーティーの主流の戦い方になっている。


 

 俺、高田昇太たかだしょうたが迷い込んだのは、異世界だった。


 本で読んだことがある大抵の異世界転生なんかは、いわゆるチートスキルなんかを授かってスタートするみたいなのがお決まりなのだが…


 俺が授かったのはデバフを相手に与えられるスキル系統のみ。


 こちらの世界に来て剣の特訓や攻撃魔法なんかの練習もしたが、全然ダメだった。

 元々体を鍛えたりスポーツをするのは好きだった。だがこの世界でいくら筋肉を鍛えても素振りをしたりしても中々ステータスも上がらず筋肉も付かない。

 魔法にいたっては炎魔法や氷魔法なんかも初級すら発動させられないときた。


 やはり短期間では無理なのか、やはり幼少期からやっていないとダメなのかもしれない。大人しく転生者は与えられたモノで戦えという神のお告げかもしれない。


 結局一人ではろくに魔物や盗賊に太刀打ちできないと早々に判断したので、パーティーに入れてくれる仲間を探した。

 

 幸か不幸かこの異世界には敵の弱体化を専門とする魔法使いは数が少ないらしく、珍しがられたため、すぐに見つけることができた。


 後で分かった情報だが、弱体化を扱う魔法使いジャマーが少ないのは、そもそもそんな魔法を使えなくても大抵の魔物ならどうとでもなるかららしい。


 だが、居るなら居るで便利らしく、攻撃役の負担をかなり少なくすることが可能であるため、パーティーのメンバーは非常に良く接してくれている。


 そして、俺は攻撃魔法に関しては全く使えないが、弱体化魔法では強力なものを扱うことができた。それが『ダウナオール』だった。


 情報を集めたところ、この魔法はどうやら使える人間が全くいないらしい。ちなみに相手の攻撃力を下げる魔法は存在するし、使える者もいるらしい。

 

 だが俺の魔法は、相手の筋肉自体を一時的に劣化、減少、縮小させるものだ。

 これを食らってしまえばたちまち相手は動けなくなる。異世界ではいくら体を鍛えていようとも、結局デバフには勝てないのだ。


 (遠距離攻撃は勘弁してほしいけどね)

 (あと、時間経過で普通に解けちゃうから調子に乗ると手痛い反撃を食らっちゃうのも注意点)




 

 「ふぅ、終わりだ。お疲れさん!」

 リーダーの大剣使いが、依頼を完了したことを確認して、皆に声をかける。

 

 「今日もらくしょーね〜」

 

 「うん、余裕余裕」


 リーダーの剣士は勿論、魔法使いと双剣使いにとっても、やはりこの程度の敵なら楽勝なのかもしれない。



 そもそも、パーティーを組む前にソロでも活動していたという三人だ。一人では非力な俺とは違う。


 

 「(俺ももっと剣技の才能や強い攻撃魔法があったらなぁ…)」


 仲間のスキルや動きを見るたびに、嫉妬が滲み出そうになるが、そもそも俺なんかをパーティーに置いてくれているだけでも心優しい仲間なのだと自分に言い聞かせる。


 俺はまだだが、ここ最近では使えないと思ったパーティーメンバーを容赦なく解雇した、という話を実は複数聞いてしまっている。

 

 


 


 だから今日も俺はデバフをばら撒き続ける。別にやろうと思えば防御力を下げたり素早さや属性耐性なんかも下げられるが、それは一部の強敵くらいにしか使わない。パーティーの仲間が強いのもあるけど、大抵ならダウナオールひとつで済んでしまうからだ。


 

 

 「おーい行くよ〜!」


 「待ってーすぐ行く〜!!」

 

 この調子なら当面は安泰かもしれない。きっと。

 なんかフラグがビンビンに立ってるかもしれないが、俺は今を生きることに必死なのだ、勘弁して欲しい。

 


 

 

 

 


 

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