ペンギンは、そこまできているらしい。

卯野ましろ

ペンギンは、そこまできているらしい。

「この前に脱走したペンギン、ムキムキになって戻ってきたらしいぞ」

「え!」

「すごくね?」

「その子……結構長い間、水族園から離れていたよね?」

「すげーなペンギン」

「侮れない……」

「あんな小柄で、かわいい姿しているけど意外にタフだなぁ」

「あ、ペンギンって実は筋肉質なんだよね」

「そうなのか……あっ! タフといえばさぁ……人間の男性を好きになっちゃった女の子ペンギンも、すごい子だよね!」

「あー、あの飼育員さんについてくるペンギンかー」

「あの子、かわいいよね~」

「駆け足? めっちゃ速くて笑った。あの動画、何回も見ちゃうよー」

「ペンギンって、あんなに速く歩けるのね」

「あれ見て、びっくりしたよねぇ。すごい早さで大好きな人を追いかけちゃってさ」

「でも、あの男性スタッフは複数のペンギンに好かれているんだよね!」

「そうそう! で、ペンギンなのにキャットファイトを繰り広げるという……」

「ペンギンの喧嘩って、なかなかすごいよね」

「うん。特に恋愛問題は、激ヤバ……」

「かなりドロドロだよね。ペンギンの恋愛って……」

「一夫一妻制という胸キュンなイメージ、壊れたわ」

「あんなかわいいのに人間並みの……いや、それ以上のドラマを繰り広げているよねペンギンたち……」

「どこかの飼育スタッフさんが、ペンギンの相関図を作っていたなぁ。あれも、おもしろかったよ」

「見ている人間は楽しいけど、本人たちは笑えないくらいバチバチだよね」

「本人……ペンギンなのに本人……」

「いや、それ間違いではないかもよ? だって『人』と『鳥』で人鳥ペンギンって読むみたいだし」

「……ペンギンが人権を持つのも、もはや時間の問題か?」

「アハハ! さすがにそりゃないよー」

「いくら身体能力がすごいからって」

「人間に恋してもペンギンは、いつまでもペンギンのままだよ」

「でも噂ではペンギンって、ちょっとずつ進化しているらしいぜ」

「あ、私も聞いたことある! 温暖化が止まらないから、もう人間に合わせる準備をしているって!」

「……マジ?」




「いや! ずっと私はあそこにいたかった!」

「僕は合わせるべきだなぁって思うよ? お寿司は、おいしいし」

「魚も良いが米も良い」

「でも、やっぱり怖いよ~」

「オレ帰りたい……」

「それに日本語、難しくて嫌だ~」

「もっと簡単な言語を覚えたかったな」

「日本の人間のペンギン愛は強いから、まずは日本に馴染もうっていうのは甘かった?」

「うーん……でも何だかんだで、ここまで話せるようになったよねぇ私たち」

「というか来ちゃったね」

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