盗撮事件っぽい……

「それで、学校でお友達は出来たの?」


「そりが合うヤツなら。雨月っていって、この前一緒に痴漢を捕まえた」


「雨月って言うと、バウンティハンター業界ではよく耳にする一家だな。そんな人と仲良くなれるなんてすごいじゃないか」


 ゴールデンウィークも終わり、新たな学校生活に慣れてきた頃。親にとっては、子供が学校で上手くやっていけてるかどうか気になる時期かもしれない。

 僕もこうやって両親から学校生活について質問を受けていた。


「そうだ。海に頼みたい事があるんだ」


「なに、お父さん」


「後できちんとバウンティハンター協会を通して依頼するんだけどな、捜査して欲しい事件があるんだ」


「ああ、もしかして、あの事件のこと?」


 お母さんは内容をある程度知っているらしい。


「捜査して欲しい事件はな――盗撮だよ」




「こちらの更衣室でカメラが発見されました」


「では、早速調べてみます」


 数日後、依頼を正式に受けた僕は雨月と一緒に盗撮事件の捜査に入った。

 現在は盗撮が発覚したスポーツジムの男子更衣室に来ていた。


「それにしても不思議な事件だよね。男子更衣室にも女子更衣室にも盗撮カメラがあったなんて。しかもいろんな場所に」


「いや。人の好みは人の数だけある。どんな盗撮映像だろうと欲しいヤツは必ずいる。男女両方の更衣室にカメラがあるからって、不思議な事件だと思い込むのは早すぎると思うぜ?」


 その後、カメラが発見された場所を何カ所も捜索してみたけど、犯人に繋がりそうな手がかりはつかめなかった。

 ただ、共通点は見つけた。


「そういえば、どの更衣室も最新式のロッカーを導入していたよね? 4桁の好きな数字を設定できる、扉一つ一つにタッチパネルが付いているやつ」


「そうだったのか? そこまで気付かなかったぜ……」


 まぁ、施設によって室内の雰囲気を合わせるため塗装とかを変えるからね。印象が違うから気付きにくいのかも。


 僕達が捜査を進めている中、あるスーパー銭湯の捜査を終え帰ろうとしたところ、ある客に話しかけられた。

 その客は親子のようで、女性と女子小学生だった。お母さんと娘さんの顔が似ていないのが気になったけど……。


「もしかして、バウンティハンターの方ですか? ちょっと気になることがあったんですけど……」


「どうされました?」


「実は、以前このスーパー銭湯を利用した後、私のクレジットカードで身に覚えがない決済が行われていて。今、カード会社と話し合いを行っている最中なんですけど……」


 その瞬間、僕の頭に電気が走った。

 盗撮被害に遭った施設の共通点、ロッカーの方式、そしてクレジットカードの不正利用――全てが繋がった。


「情報の提供、ありがとうございます。雨月、ちょっと調べたいことがあるんだけど、膨大な量になりそうだから手伝ってくれないかな?」


「いいが……何かわかったのか?」


「この事件、僕の予測が正しければわいせつ目的じゃないかもしれない」




「なかなか来ないね……」


「まぁ、そろそろ来るだろ。石田の推理、俺は信頼しているからさ」


 僕が事件の真相をひらめいてから、雨月と一緒に条件に合う、まだ盗撮被害が報告されていない施設を探し回った。

 その結果、あるサウナ店の男子更衣室で盗撮カメラを発見した。


 でも、僕達は見て見ぬフリをした。代わりに、店に事情を説明して監視カメラを設置。

 そのまま数日に渡り、サウナの近くで監視カメラの映像を確認しながら張り込んでいた。


「……おい、石田。こいつは……」


「うん。盗撮カメラに手を伸ばした」


 周りに気付かれにくい動きだったけど、その男は間違いなく盗撮カメラを手に取っている。

 そしてロッカーを開け、その中でカメラの映像を確認している。


「すぐ行こう」


「ああ」


 サウナ店へ僕達は急行した。この間も、監視カメラの映像に注意を払う。


「やっぱりこの人、他の人のロッカーに手を出してる」


「スピード上げるぞ! このまま逃がしてたまるか!!」


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