今後の進路
「まさか、性別を入れ替えられる特技だとは……」
「聞いたこと無い特技よね」
僕の特技『肉体改造』が、なんと性別を変えられるものだと発覚した後、僕は両親にこのことを報告した。
その後に色々とテストをしてみた結果、やはり僕の肉体改造は性別を変えることが本領である事がほぼ確定した。
さらに、身体の線や顔立ち、身長、髪の長さまで自分の好きなように変えられることが判明。特に自分の好みや理想の姿であれば肉体改造がやりやすいこともわかった。
なお、僕の理想の女の子像は小柄でボディラインの主張が控えめな子なので、そういう女の子への変身がしやすいらしい。
「でも、筋力が瞬間的に強くなるのは何でだろう?」
「身体の線を変化させられることが関係しているんじゃないか? ほら、身体の線は筋肉の発達次第で変わるだろう。それの流用で筋力強化が出来るんだと思うぞ」
ちなみに、医療機関で検査をした結果、性別を変えたとき外性器どころか内性器までも全て変わってしまうことが判明。理論上、男子の時は射精出来るし、女子の時は生理も来れば妊娠も出来る……らしい。
まぁ、子供を作ることは多分無いだろうけど。
「それにしても、海が女の子になれるなんてね。私、妹に娘がいるから、ちょっとうらやましかったのよ。育て甲斐があるわね」
お母さんの妹、つまり僕の叔母さんには娘がいる。つまり僕の従姉妹だ。
たまにしか会えないこともあってか、お母さんは従姉妹のことを結構かわいがっていたけど、娘が欲しかったって理由もあったのか……。
「まぁ、その辺についてはさておき。海、自分の特技についてある程度わかったところで、考えなければならないことがある」
「考えなければいけないこと……?」
「進路のことだ」
そう。今の世界、特技が現れてからは自分の特技に合った職業を選ぶ場合が多い。
僕はもう中学三年生。まだ直接将来が決まるわけじゃ無いけど、それなりに進路を考えなければならない。
「お母さんから言わせて貰えば、少なくとも警察官じゃないわね」
「確かに。戦闘力としてはパンチが弱いし、どちらかというと潜入や囮としての使い道が多そうだ。そうなると、『バウンティハンター』が向いてそうだな。警察は、潜入捜査も囮捜査もやらないしな」
『バウンティハンター』。特技が現れた後のこの世界において、最も花形とされる職業だ。
そもそも、特技が出現してから犯罪が急増したと言われている。特技は戦闘に向いている物が多く、いわば没収不可能の武器が多くの人に配られたのと同じ状態になったのだ。
その結果、当然ながら犯罪、特に凶悪犯罪が激増したと考えられている。
もちろん、そんな状態になれば警察や場合によっては軍の手も足りなくなる。そこで、特別な許可を与えられた人達に捜査権・逮捕権を付与し、犯罪者の捕縛に報奨金を与えるようになった。
これが、バウンティハンターが生まれた経緯だ。
バウンティハンターは派手に特技をぶっ放し、犯罪者を摘発。一般市民の安全を守るということで特に華がある職業と見なされているのだ。
「バウンティハンター。うん。確かにいいかも」
「海、おまえは警察官の子供だ。危険もあるが、立派にバウンティハンターとして活躍できると信じているよ」
「そうと決まれば、すぐに対策しなくっちゃ。バウンティハンター育成校は倍率高いらしいからね」
というわけで、この日から僕のバウンティハンターを目指すための特訓が行われることとなった。
バウンティハンターになるための訓練は、多岐にわたった。
まず、戦闘術。逃げたり抵抗したりする犯罪者を捕まえるために必須の技術で、バウンティハンターと言えばこの技術を真っ先に思い浮かべる人が多い。
そして捜査技術。バウンティハンターの仕事の中には、犯人がわからない事件に関わることもある。その場合、バウンティハンターが自ら捜査して犯人を明らかにしなければならない。
そしてさらに、僕にはもう一つ特訓していることが……。
「口紅の色、合ってないわよ。それにアイラインも濃すぎ!」
「は、はい」
「ツインテール、バランスが悪いわよ。きちんと左右対称に!」
「はいぃ……!」
女子らしさを磨く特訓だ。お母さんに教わっている。
この世界では、男子しか入れない場所もあれば女子しか入れない場所もある。時には、そんな場所に潜入しなければならないこともバウンティハンターにはある。
その点、僕の特技は世の中のあらゆる場所に入り込むことが出来る。性別を自由に変えられるから。
ただ、無事に潜入できたとしても違和感を持たれてはならない。怪しく思われれば行動範囲を狭めてしまうほか、不要なトラブルを招く恐れがあるからだ。
だから、誰も疑うことが無い位に『普通の女子』としての身の整え方や話し方、行動をたたき込んだ。
こうして約1年にわたる訓練を行い、いよいよ本番の日がやってきた。
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