とも子の洋裁店

あっちゃんとのなれそめ

第1話 とも子の洋裁店 「洋裁店で働く」

道端にミシンの音がする。すると裁縫の店だ。

中に入ると、とも子が下向いてミシンをかけてる。彼女は集中している。

でもこの洋裁店は彼女が店主ではない。

2階から呼ぶ声がする「とも子さん、お腹空かない?」

呼ぶのはとも子の友達、桂子、店の店主でもある。

「うん、お腹空いたわ。」

桂子「肉すきでどう?」

と「でも、肉すきって季節外れじゃない?」

桂「なんで?」

と「普通は3月には季節替わりでメニューが変わるわよ」

桂子「じゃあ食べ納めってことで今年最後に食べようよ」

とも子「わかった。縫物休憩するわ」

彼女は取り敢えず、縫物を片付けて、二階にあがった。


二階には桂子の旦那、亮太がすでに座って、鍋をつついている。

「よう、お疲れさん」

と「ちょっと根つめすぎたわ。頂きます。」

桂「ねえ、今度、うちの店にもCAD(キャド)を導入するのよ。」

亮太「ああ、いよいよ、うちの店もOA化するわけかい。おいらの出番も少なくなるなあ」

桂「何言ってるの。配達と注文はうちの業務の根幹よ。とも子さんもCAD習ってたんでしょ」

とも子は少しためらった。

「そら、、確かにならってたけど、プロでやるのは初めてよ。できるかしら?」

桂「できるでしょ。手書きでデザインするのをパソコンでやるだけだから。」

亮太「パソコン業務手当に三万支払いますよ。」

桂子は顔を歪めた。

「あんた、そんなん簡単にできる訳ないやろ」

「いやあ、でも、それぐらいの手当てを当てていなけりゃ。とも子さんに頑張ってもらわないと」

とも子「うーん、専門学校時代の友達にも相談してみる」

桂「それでいこう。」


彼女らは洋裁CADをネットで注文した。

しかし、使い始めは難しかった。

でもとも子は経験があるから、段々思い出してきた。

彼女は実務が主だったので接客の機会は少なかった。

でも桂子が不在の時は接客に回るんだ。

桂子の亭主、亮太はもっぱら配達に回ったり、

チラシ配ったりしている。あとは荷物整理だ。


洋裁店なんて、めったに男の人は来ない。

店の外から中を覗く男性も皆無だ。


ところがある日、とも子にラブレターが届いた。

でも待てよ、ラブレターなら名前が書いてあるはずだ。

桂子宛に来たものでもない。

じゃあなんて書いてあるか?

「いつもミシンの前で作業している長身の女性」

これだけで、わかる。

でもね、「愛してる」とかって書いてない。

差出人の名前も書いてない。

「いつもミシンを縫ってる、

 長身の人、好きです」

としか、書いてない。


桂子ととも子は二人してみてる。

桂「なんだろ?いたずらかな?」

一方とも子は真剣に見てる。しかし笑いながら、

「私、こんなんもらったン初めてやわ。」て見てる

「でも本当に男の人が書いたのかな?」

「なんで?」

桂「だって、男の人なんて、店に入ってこないし、女の人がラブレターを書いて来るのもおかしい。レズじゃないでしょう?」

と「いやだぁ~(笑)」


亮太「何だい?」

奥から亮太が興味津々で出てきた。

桂「とも子さんにラブレター来たのよ」

亮「何?差出人誰だよ?」

と「書いてないねん。」

亮太は手紙を見直した。

「うーん、字の感じでは少し荒っぽいから女の字ではないな。

でも、男がなんでとも子さんのこと知ってるんだろう?」

彼はとも子の方を見た。

と「ううん、私知らないわよ。お店に男の人来ないし」

桂子「ほっとくしかないな。差出人の名前がないし。」

亮「まあ気にせず放置しとこうよ」


でも、とも子は気になった。

かと言って、CADの操作方法をクリアしなきゃならないし、

それどころではなかった。


とも子は意に介せず、CADの勉強を進めた。

CADはいわば、立体的に製図をする方法の一つだ。

建築CADとかもあるが、

洋裁CADも最近ではメジャーなソフトといえる。

普通に線を引いたりして図面を書くんだが、

その場合、書き間違えたりして修正する事が出来ない。

だって鉛筆と消しゴムで図面を書くわけじゃないからね。

CADなら、パソコン上に製図を書いて、それをパソコン上で

修正するから、やり直しやすい。


ある時、割と年配の女性のお客さんが入って来た。

「いらっしゃい」

客「スミマセン、黄色のこのジャンパーの汚れ取りたいんですが、すぐに取れますか?」

とも子は素材を見た。

「クリーニングで直すことができますよ」

彼女はそう言ってふと相手の女性の顔を見た。

(もしかしてこの人が、ラブレターの差出人では?)

そういう邪念が、引っかかるようになった。

(でも差出人は男じゃないのさ?)

彼女はそう思いつつも邪念を振り払って接客に徹した。


お客さんが出て行くと、とも子はふと思いついて、

店から出て、さっきのお客さんを追いかけた。

「お客さん!お客さん!」

客「何ですの?」

「すみません。この程度の汚れなら、軽く湿らせたスポンジに中性洗剤を原液のままつけて、叩くように汚れを落とせば簡単に落ちますよ。どうですか?」

「いやあ、もう、自分でやるの面倒だから、お宅にお任せすわ。仕上がりも綺麗でしょうし」

「わかりました。有難うございます」

店に戻ると桂子が出てきた。

「どうしたの?」

と「なんか、ジャンパーの汚れを落としてほしいっていうのよ、お客さんが」

桂子「それなら、クリーニングで間に合うわね。でも縫い目とかが荒っぽくなってるし

それは修正すればいいわ。」


とも子「ねえ、わたしちょっとラブレターの事気になってるかなあ?」

桂子「え?なんで?」

「いやあ、なんかお客さんが男の人でもないのに何となくラブレターの差出人じゃないかと勘ぐったりすることがあるの」

桂子「大丈夫よ。多分そういうのって一回だしたらそれで終わり、みたいなのが多いから。亮太には内緒だけど、私も中学校の時ラブレターもらったわよ。でも差出人の名前がない、だれが出したかわからない。結局分からず仕舞いよ」

とも子はニヤリとして

「案外、亮太さんだったりしてね」

ハッハッハ(笑)


奥で製品を整理してた亮太がこの笑い声を聴きつけた。

「何を笑ってるねん?」

桂子「ん?いやあ、こないだとも子さんに来たラブレター、誰かなと思って・・・・」

「ああ、それよ。でも、もしかしたら、案外身近な人物かもよ」

と「そんな人おらへんわ」

桂「あんまり気にせんときよ。私の考えではそれ書いた人、そのまま諦めて消えるんじゃない?」

と「消える?」

亮「ほっといたら、関わってけえへんで」

とも子は「へぇー」って感じで余り気にしてないようにも思えた。

彼女は仕事に専念しているr。だから、1カ月もすればそのことを忘れた。

別に波風のない穏やかな日々を送っていた。


~「二人の男」~

とも子のいる洋裁店だが、本当に調子よくいっている。

CADの操作も楽々できるようになった。

でもね、「桂子」がやってるのに「とも子の洋裁店」って不思議だと言う人もいるんだ。

でもね、みんなの好きなロンリーガール=とも子が主人公だから、これでいいのだ。

実際、とも子の業務成績が評価されて、ギャラもアップしたんだ。

まったくいい、感じだね。


ところが、ある日桂子は店の近くでばったり、高校の同級生に会った。

男だ。名前は冨士夫。

「よう、桂子ちゃん。久し振りだね。元気?」

「あ、元気よ。冨士夫君はどうしてるの?」

「君のとこは、旦那さんとあと一人、長身の女の人がいるよね?」

桂子は不審に思った。

「え?なんで長身の女の人の事を知ってるのよ?」

「そら、店の近く通ったら、見かけるやん。どうしてよ?」

「あんた、とも子さんにラブレター書いたのあんた?」

冨士夫「えええ???そんなもん書くわけがないだろ」

「ホンマ?」

「そらそうよ。だって、お互いに面識ないじゃん。

おい、誰か、その長身の人にラブレター出したのか?」

桂子は渋々、

「そうなんよ。誰からかわからないねん」

冨士夫は苦笑して

「そらそうやろ(笑)ラブレターは自分の名前を秘密にして出すもんやで。


すると冨士夫は思いついた。

「あ、もしかしたら、あいつや!」

「あいつって誰よ?」

「正太郎や。実はな、こないだ、正太郎に君の店の長身の、割と可愛いニコニコしている・・・」

「うるさいなあ、名前で言いよ。とも子さん」

「そうよ、そのとも子さんの話を正太郎に話してん。」

胡散臭そうに桂子は訊いた。

「どんな話よ」

富士「う?いやあ、あのとも子さん、マブいって」

「マブいって何よ?」

冨士夫は一瞬もたって「だからカンワユイってこと!」

桂子

「キャー!私らが知らんうちにそんな話してたのね?この変態!」

「何が変態やねん。カワイイもんはカワイイって言うてるだけや」


桂子は懇願するように冨士夫に手を合わせた。

「お願い、彼女とても調子いいねん。だから邪魔せんとってよ」

富士「いや別に邪魔なんかしてないよ。ただ、正太郎が俺を出し抜いて

ラブレター出したのが気に入らん。一言相談すりゃいいのに」

「な、あんまり関わらんようにしてや。店の売り上げにも影響するし、私らあの子が便りやねん」

「よし分かった。取り敢えず、俺から正太郎に話してみてどういう事なんか確かめてみるわ」


一方、とも子はまったくそんな事を気にしてない。

ひたすら、仕事に集中している。

だから冨士夫や正太郎の事はまったく知らない。

桂子もそんな話には一切かかわってない。



~「とも子へのモーション」~

「おい!」

急に冨士夫は正太郎を呼び出した。

「な、なんだよ。」

正太郎は嫌におどおどしている。

「おまえ、とも子さん、、いや、桂子の店の背の高いマブい女の人にラブレター書いたそうやな?」

正太郎はびくついて

「いやあ、そんなん、知らんわ」

と言いきって震えている。。

「じゃ、何でそんなに震えてるんだ?」

「いや、べ、別に」

「1カ月前、おまえに、あの人の話したろ?おまえそれでラブレターだしたんじゃねえのか?」

正太郎は黙っている。

冨士夫「おい、何とか言ったらどうだ?」

しばらく黙ってから、正太郎はポツリポツリと話し出した。


「実はな、俺、あの人の事、すっ好きやねん。」

冨士夫「何??おまえ、それやったらそうと俺に言えや」

「恥ずかしいから言えんかってん。だから、自分はあの人にラブレター出してん」

「そういう事か、でも、あの人には好敵手がいるぞ。」

「え?だ、誰?」

「俺やんけ」と冨士夫は開き直った。」

「そんな・・」

「そんなもへちまもあるかってんだ。おめえがモーションかけたから、俺も応じざるを得なくなったんだぞ。どうしてくれる?」

正太郎は無言だ。

冨士夫「決闘じゃ、決闘!お前と俺でサシで勝負じゃ!」

正太郎「明治時代と違って、今、決闘したら決闘罪で捕まるっで」


「じゃあどうする?二人で、背の高いマブい、いやとも子さんの前に行って、向こうがどっちの男を好きになるか訊いてみようか?」

「あ、それええな」と正太郎はすんなり言った。

「よし、じゃあこうしよう。桂子に頼んで、二人の前にとも子さんを呼び出す。それで、ラブレターを出したお前がいいか、元々好きだった(元々か?))俺がいいか、選んでもらおうじゃねえか?」

正太郎「そんな事したら仕事の邪魔になるぞ」

「でも、俺たちだって真剣だ。やろう!」

こうして、冨士夫と正太郎はついにとも子と面会する事になった。


桂子からその話を聞いたとも子は

「いや~ん、そんなん面倒臭いわ。私はただここで仕事してるだけなのよ。

男の人を二者択一で選べなんて、余計な事よ」ととも子は拒否した。

桂子「でもね、とも子さんだって気にしてるし。気に入らなければどっちもふっちゃえばいいじゃん」

と「そのふったり会ったりするのが面倒くさいわ。」

桂「じゃあ、1回だけでいいじゃない。それで決着付ければいいわよ。

とも子はため息をついた「はあー。仕方ないわね。でも今回だけよ、

これからは2度とそういうお誘いはごめんよ。いいわね。

「わかったわかった。」と桂子が言うと

奥から亮太が出て来て。

「そんなんせん方がええのとちゃうか?余計な男に関わらん方がええで」

桂「でもこのままやったらなあ、とも子さんにも引っかかることだろうし」

亮「よっし、じゃあこうしよう。俺と桂子が付いて行って意見する方がええで。それでどうや?」

「それで行こうか?

と「でも、もうこれ1回限りよ」

とも子は渋々っと言った感じだ。


~「初対面」~

いよいよ、とも子と冨士夫と正太郎が会う事になった。

一応、付き添いで桂子も参加した。

場所は地下の喫茶店。

ところが時間になっても、正太郎が来ない。

時間より10分も過ぎた。

(しかし、まあ待て、ロシアには約束時間より1時間25分も遅れる人がいる!)

冨士夫は焦ってきた、彼はすかさずケータイで電話した。

「もしもし、正太郎?お前何やってっるんだよ!約束の時間だぜ。

 え?延期する?冗談じゃない。もう、とも子さんも桂子も来てるんだぞ。

 ・・・・そうか?来るのやめるか?

 じゃあ、俺が一人で、とも子さんをもらっていいな?

 怖気づいたのか?・・・・緊張する?

 冗談っじゃない俺だって緊張しとるわ。

 ・・・わかった。ほなな」

と電話を切った。


桂子に「正太郎こないよ」

「どうするの?」

「仕方ない3人だけでやるか?」

その間、とも子は苦笑している。でもなんか面倒臭そうだ。

と「亮太さんも呼んだら?」

桂「そうしようか。」


桂子「それで、結局どういう事なの?ラブレター書いた正太郎さんの意図も知りたいわ」

冨士夫「要するに俺が、いや僕が、正太郎にとも子さんの事いいな、って話したんだよ。

それを俺を、いや僕を出し抜いて、正太郎がラブレターを出したってわけよ」

とも子はほとんど何もしゃべらなかった。

富士「とも子さんはどう思いますか?」

と「どうって、わかりません。」

桂「冨士夫君こそ、とも子さんをどう思ってるのよ?」

「好きです」

とも子はもじもじしている。

「好きだとして、とも子さんにどうしてほしいの?」

富士「デートとか・・・」

するととも子は重い口を開けた。

「デートは時間かかるし、仕事ができる範囲じゃないと無理ね。」


富士「じゃあ、会ってくれるだけでもいいですか?時間に手間はとらせないから」

桂子「正太郎さんはどうなるの?」

「諦めてもらうしかないな」

亮太「そんな事して友情にヒビが入らないかい?」

「だって、今日の約束もすっぽかしたんだから、とも子さんの愛を受ける資格がないです」

と「なんか中学校の交換日記みたいね(苦笑)大人なんだから大人の恋愛がしたいわ」

亮太「それに、とも子さんはCADで洋裁のデザイン作っているし、付き合うんだったら真面目にしなきゃだめだよ。

富士「つまり、結婚を前提ってこと?」

桂「そこまで考えられへんと思うわ。仕事のウェイトも大きいし」

とも子「取り敢えず、時々会ってみることにしようか?」

桂「それでいいのね?じゃあ、それで決めよう」

亮太「そうしようそうしよう」

富士「お祝いにビールでも飲もうか?」

とも子「ジョッキでね(笑)」


というわけで、結局とも子と冨士夫が付き合う事になった。

何となく『軽いお見合い』みたいなもんだ。


~「エプロンの注文」~

とも子と冨士夫は何となくうまくいっているようだ。

でもアツアツデレデレってことはない。

店もいい感じだ。

早速お客さんが来た。

とも子「いらっしゃい」

客「すみません。ウールのチェックのエプロン作ってもらえますか?」

「はい、いいですよ。サイズは?」

「小学校6年生向きで大柄だからLLでお願いします。」

とも子は後ろっを振り返って、桂子と何か喋ってる。

「色のイメージが・・・」

とも子はお客さんの方を振り返り、

「お客様,カタログかなんかありませんか?」

「あー、あ、カタログはこの写真を参考にお願いしたいんですが。


見ると白黒クラス写真だ。これでは色のイメージが湧かない。

「(そうだ、フォトショップで色付けしたらカラーにできるって、冨士夫君が言ってたな)」

早速、とも子は冨士夫に電話した。

「あ、冨士夫君、あなた白黒写真のカラー化できるって言ってたわよね?」

てこれだけ話し合うぐらい仲がよくなっている。

富士「そうよ、フォトショップで出来る。」

「クラス写真から一人だけピックアップも?」

「できるできる。」

「じゃあ、やってよ」

「ギャラなんぼくれる?」

「E千円」

「ええ?G千円ぐらいおくれよ」


と「無理やな」

富士「なんで?」

と「これってネットのカタログで見たら、803円よ!」

「ほな、桂子の店で買わんでも、そこで買った方が得やん。」

「そのカタログ何処?」

「ここよ。」

「あ、これはウールじゃないんじゃないかい?」

「ウールに置き換えればいいじゃない」

冨士夫は腹を決めた。

「よし、じゃあ、送料込めて二千八百円だな。で、おいらの工賃は。。。C千円にしとこ。おまけ」

「よろしく」


お客様「この写真を元に、カラーイメージを作ります。」

「いやあ、この写真1枚しかないんですよ。」

「そうですか、じゃあ今うちでスキャンしてお返しします。ちょっとお待ちください。:


裏に回った、とも子はまた桂子と何か喋っている。打ち合わせだ。

スキャナーで写真をコピーしている。

すると、お客さんの持ってきた写真が拡大された。

「御客様、これをカラー化しますんで、それを元に製作します。」

客「ありがとう。で、なんぼ?」

「白黒をカラーにするのに、C千円かかりますがよろしいですか?」

「はい、では、壱萬円札で両替してくれますか?」

「お客様、生憎、今、当店には細かいものがないので、仕上がった時に、お支払い願いますか?」


「そしたら、カラーのイメージも見たいわね。その時にでもお支払いしますから、よろしく」

「はい、どうぞ、お待ちしています。


お客さんが帰った後、とも子と桂子とが話してる。

「ねえ、ネットで803円で売ってるものをE千円近くで売るってぼったくりやん」

「でも素材が違うからね。こっちで作ったらこっちの良さが出るのよ。」

「そうかしら?」

「そうよ。冨士夫君にもカラー処理お願いしといたから。」

「いつよ」

「あ、いつになるか話さなかったわ。ま、そのうちここ寄るって」

桂「いい取引相手が増えたわね?」(笑)

と「取引?まあ、そんなとこかしら」(笑)

「でも、この写真て、肩にストラップみたいな縫い目があるよ。」

「これがいい所ね」


しばらくして、亮太が配達から帰ってきた。

「どうよ?」

桂「う、お客さんキター。うまくいきそうよ」

「冨士夫君は、帰りに寄るのかい?」

と「うん、白黒写真をカラーにしてもらうのよ」

「それはすごい。おい、桂子、彼も家で雇うか?」

「それはだめよ」


~「冨士夫は素早い」~

仕事が終わって、とも子と冨士夫が会ってなんか喋ってる。

冨士夫「よ、エプロンの写真だけど、もう出来た!」

とも子「え?全部カラーにして?」

「当り前よ。ほら、(と写真を見せる)カメラの南ムラで仕上げたのよ」

「へー、大したもんやん」

「そうよ。この色付けどうだ?」

「じゃあ三十分ぐらい?」

冨士夫は得意げに

「それぐらいだろうな」

「でも、この色合い、お客さんが納得するかな?」

とも子はすこし首を傾げた。

富士「本人にもうちょっと詳し色合いを聴いとけばよかったな」

と「でもこれだけの事が30分でできるなんて大したものね。

桂子さんのお店で雇ってもらったら?」


冨士夫は首を振った。

「いや、俺にはクロネコヤマトの配達があるからな」

と「そんなに儲かるの?」

「儲からないなあ。ヤクザの事務所にも行かされるし。」

と「殺された?」

「うん。なんでやねん??別に怖くなかったよ」

「でも暴力団でしょ?」

「そうよ、県警の外和君が『ヤクザはハジキ持ってるから気を付けろ』って言ってたよ。

と「そんな危ないとこより、パソコンでカラー操作してる方が安全よ」

「そうか?カネになるか?」

「んー、ならへんと思う。」

富士「それに、白黒をカラー化するなんてめったにないと思う」


とも子「ところで、正太郎さんはどうしてるの?」

富士「お、あいつに興味あるのか?」

「いえ、べ別に」

「彼はね、思ってる事の半分しか話すことができないんだ」

とも子は少し驚いた。

「でもラブレター書いたり、積極的じゃないの?」

「そうよ、彼は文章だと自分の言いたい事が伝えられるんだ。だからあまりしゃべらない。」

とも子、うんうんと聴いている。

「それに、吃音(どモリ)の気があるから、、自分から積極的に喋らない」

と「あの人なんの仕事してるの?」

「老人介護だよ」


とも子

「あなたはどこかデザインの学校行ってたの?」

「いやあ、全部独学だよ」

「キャーー、めっちゃすごい。イラストレーターとかも使えるの?」

富士「あれは無理だな。デザイン専門学校でも行かなきゃ会得できないソフトだよ。」

「白黒をカラーにするってどうやるの?」

「色を付けていくのさ。慣れれば簡単だ。君にも教えようか?

とも子は苦笑して

「私はCADだけで十分よ。」


すると、亮太と桂子が通りかかって同席した。

とも子「ねえ、桂子さん、冨士夫君を家で雇うのはどう思う?」

桂「そんなに給料出せないわよ」

とも子はさっきのカラー写真を見せて

「これ白黒からカラーにするのにたった30分でできるのよ。」

亮太「うわあこれはすごい!」

桂子「ねえ、明日休みにしてみんなでドライブに行かない?」

と「いいねえ。行こうよ。」

富士「いいんだけど、なんで亮太さんって話の最後の方にいつも出てくるの?」

桂「忘れられた存在なのよ」

亮太「そんな事言うのか、よし明日は俺が運転して行こう」

行こう行こう、って盛り上がった。

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