【教罪】

文屋治

端書き

 「碌(ろく)でもない人生を送って参りました」

 私は他人様(ひとさま)に逆らえない、小心者であります。

 私は要領の悪い、出来損ないであります。

 私は他人様(ひとさま)の力にすがる、弱者であります。

 私は考えの至らない、愚か者であります。

 私は典型的な、人生の反面教師であります。

 私は陽と陰、二つの面が入り交じった人間であります。

 私は理想を掲げることを止めた、無欲な人間であります。

 私は此の碌でもない現実に敗北した、敗者であります。ですが、其れと同時に、私は己の内で殺し続けてきた自我を解き放ち、現実から逃げ切った、勝者でもあります。

 勝者と敗者、此の両方である私がどう言った人間なのか、そして、此れ迄にどう言った人生を送ってきたのか、其れは後の話をお読み頂ければ自然とお分かり頂けることでしょう。

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