笑顔の難しさ
むーが
笑顔の難しさ
私は表情筋が死んでいるらしい。パーティーの仲間にそう言われた。
内心でどんなに嬉しくてもどんなに怒っていても顔に出ていないと。自分では出しているつもりなのだが。
試しに鏡の前に立って笑ってみるが確かに無表情のままだった。手で口角を上げてそれ維持しようと力を入れるが上手くいかない。
私の表情筋は思っていたよりも手強いようだ。
その後もなんとか笑顔を作ろうとしていると仲間から声がかかる。
「おい、ガピ。もうすぐダンジョンに行くから準備してくれ」
「分かった。すぐ行く」
表情筋と戦うのは後にしてダンジョンに向かう準備をすることにしよう。
他の冒険者は鎧を着たり武器とかの調整をするんだろうが、私はこの体が武器なので軽く体を動かすだけで準備は終わる。仲間の所へ向かった。
そこにはローブを着て杖を持った男と鎧を着込み剣と盾を持った女がいる。私のパーティーの仲間だ。
「済まない。待たせた」
「良いよ。それほど待ってないし。ね?」
「ああ。ガピはその装備だから時間がかからないから良いよな。俺はやりたくないけど」
「体が重いのは嫌なのでな。自然とこうなる」
「はい、お喋りは後にして。今日受ける依頼の説明するから」
「……ってことなんだけど、分かった?」
「分かった」「了解だ」
大した怪我もなくダンジョンで依頼された物を見つけ、ギルドの受付に依頼書と一緒に納品し、報酬を受け取る。その後は自由時間なので各自好きなように過ごすことになっている。
なので私は自分の表情筋と戦うことにした。鏡に映った自分の顔とにらめっこしている時にふと思う。
そういえば、仲間はどうやって私の感情が分かるのだろうか。二人には心が通じているのかもしれない。
今度聞いてみようと思い笑顔を作る練習を再開させる。
「なあ、さっきガピが鏡を見ていたんだよ。気にさせちまったかな」
「そのうち気にしなくなるでしょ」
「ああ、例え無表情でもあれだけ耳と尻尾が動いていれば、な」
「丸わかりだよね」
笑顔の難しさ むーが @mu-ga
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます