とある介護職の苦悩

有宮旭

CARE☆THE☆MUSCLE☆ ~めっちゃヤメたい~

介護職の朝は早い。…いや、早い人もいれば遅い人もいるし、なんなら夜勤についたら夜も朝もあったもんじゃない。まぁ、激務薄給と言われている介護職の朝は早い人が多いのだ。多分、職種的に。わかりやすい老人ホームでの介護職を見てみよう。日勤帯と言われる、普通の会社員と同じ時間帯で働いている人たちだ。


夜勤職員から夜の申し送りを受けた後、朝食介助に入る。介護している人にしかわからないものだが、筋肉が麻痺したり変な形で固まって自分で食事を食べられないご高齢の方がいるのだ。朝食介助というからには昼食介助や夕食介助もあるのだが、まぁうん、食事の介助だ。

スプーンでごはんやおかずをすくい、ご高齢の方の口の中に入れる。その方の口元と視線を同じにして。…なんだ当たり前じゃん、と思わないでほしい。自分が座る椅子があればいいほうで、大体は椅子がない。中腰で食事を食べさせるのだ。中には床に膝をつけて解除する職員もいる。食事にかける時間は20分ほど、まずここで腰の筋肉が悲鳴を上げ始める。


続いて排泄介助を見てみよう。前述の自分で食事が食べられない人は、だいたい自分でトイレに行くことはできない。いわゆる紙おむつというやつだ、それを取り換える。介護している人にしか以下略、そういう人は立つことすらままならない。普段は車いすに乗っていて、おむつを取り替えるときはベッドに横にする。

考えてほしい。今取り上げているのはご高齢の方であって、子どもじゃない。体重は普通の一般人、時にはそれ以上なのだ。車いすからベッドに、もしくはその逆で、よっこいしょと移乗させる。大体の職員は足を肩幅に広げて、軽く息を吸い、一瞬に全力をかける。はいまた腰が悲鳴を上げた。そしてベッドの位置はちょうど中腰。それくらいじゃないと、移乗するのに余分な力が必要なのだ。腰は介助が終わるまで悲鳴を上げ続ける。ついでに脚の筋肉もまあ使う、特に膝に力を入れることが多い。


あとは入浴介助があるのだが、まぁそこは割愛する。施設や介護者によって方法は様々だからだ。あと施設じゃなければ入浴介助自体がない場合が多いし。


とにかく介護職は腰を酷使する仕事だ。そして施設では移乗により脚も使う。介護職が行くドラッグストアでは腰に巻くサポーターが売れ、次いで膝に巻くサポーターが売れる。病院では痛み止めのシップや塗り薬、時には飲み薬が処方され、職場ではどこそこの整体がいいなんて噂が飛び交う。実際腰痛で退職する職員は多いし、管理職ともなればデスクワークで肩周りの筋肉が痛くなる。高身長であればあるほど屈まなければならないため、身体全体の筋肉はさらに悲鳴を上げまくる。


やれヤングケアラーだ介護休暇だの世間は騒いでいるが、介護職自体に光が当たることはあまりない。ヘタなジムより筋肉を酷使する自信はある、もちろん皮肉を込めて。こんな介護職は常に人材不足で嘆いている。

手に職がない?さぁどうぞ介護職の世界へ。未知の筋肉痛が、すしざんまいのポーズで待っている。

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