世界美男図鑑

NADA

「筋肉」

大学生のミナは、珍しく熱心に教授の話に耳を傾けていた


普段のミナなら人類学の講義は休憩時間に当てるところだ

今日のミナがやる気な訳は単純明快だ


「美男子の歴史」

前方のスクリーンに映し出された文字が答えだ

ミナだけではない

講義室全体がいつもより熱気を帯びている


教授が資料として持ってきた『世界美男図鑑』をこれから見せてくれるらしい


ホワイトボードに本日のカリキュラムのタイトルが書かれている

ー時代によって美しいとされる認識は変化するー


「今の時代は、美容整形の技術の革新的な進歩により、筋肉さえも自由につけることができますが…えーと」


教授は、手元のパネルを操作してスクリーンに資料を映し出した


「昔は体を鍛えることで、筋肉を発達させていました」


筋骨隆々とした男性の映像が映る

講義室がざわつく

「えー、あれが美男子ー?」

「毛が生えてる!」

笑い声が起こり、学生たちが騒がしくなった


「この頃はまだ脱毛の技術も進んでいなかったので、男性の髭は珍しくありませんでした」

と、教授も笑う


「今では考えられないですが、この時代は日焼けした肌や鍛えた筋肉、それに顔に毛を生やすことも美男子とされていました」


えー!と驚きの声が学生たちから上がる

ミナも驚いて、あり得ない…と独り言を呟いた

やっぱりイケてる男子は白くないとね、とミナは心の中で思った


斜め後ろの席に座るミナの片思い相手のカイトくんを、チラっと見る


今日もイケてる…

真っ白のツルツルの肌、細い手足、真っ黒なアーモンドみたいな目


24世紀の現代、モテるのはカイトみたいなタイプだ


全身毛髪は無く、完全に太陽光を遮断した肌、筋肉は人工的に二の腕と、腹筋だけ盛り上がるようにつける

一般的な理想の男子だ


「まぁいつの時代も、美のために努力をしていたのは変わらないということですね…」


教授の話は続いていたが、ミナはもううわの空だ


私も、もっといい女になってカイトくんと…

もう少し体大きくしたいなー

お尻の筋肉増やそうかな…


理想の女子の体は、全身筋肉のマッチョボディ

特に胸とお尻に筋肉がついてるのが最高


美容クリニックの予約入れておこうっと…

講義そっちのけで、ミナは予定を確認し始めた

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世界美男図鑑 NADA @monokaki

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