三つ編み地味子のヒザが、ナッパみたいだった

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

ヒザ、ナッパだし!

「ウソでしょ……」


 スポーツできないと思っていたマイカの腹筋が、バッキバキに割れていた。

 シックスパックってやつ?


 足も太く、インナーマッスルがエゲツナイとわかった。

 うちのお兄ちゃんの言葉を借りると、「ドラゴンボールに出てくるナッパのヒザ」と形容できる。

 いつも黒タイツを履いているから、わからなかった。


 これじゃあ、「一緒に走ろう」って言ったあーしが、バカみたいじゃん。


「どうしたの? ミヤ」 


 スポブラのままで、マイカがあーしに話しかけてきた。


「マラソン大会に備えて走ろうって言ったの、あなたでしょ。ミヤ?」


 そうだ。

 高校のマラソン大会の練習だったっけ。

 家に一旦帰って、着替えてから練習しようってなったんだった。

 

「うんうん。待ってて」


 あーしもジャージに着替える。

 ヒョウ柄の下着が、かっこ悪く感じた。

 派手に決めてきたのに、マイカのお腹を見たら圧倒されてしまう。

 

 あーしはピンクジャージに。

 マイカは短パンで、ナッパみたいな足をむき出しにしていた。


「じゃあ、行こうか」


 河原まで、ジョギングをする。


 もしかすると、筋肉があれだけ太いと遅いのか?


「全然、そんなことなかったじゃーん!」



 ぜえぜえと息を切らしながら、あーしはマイカについていく。

 でも、めちゃ離された。

 ナッパのヒザは、伊達ではない。


「なんであんた、そんなに鍛えてるん?」


「別に。中学の時はデブだったし」


 あら意外。

 

「私が勉強ばかりして机から動かないのを親が心配して、勉強机からイスを取り上げられて、机もスタンディングデスクに替えられたの」


「たったそれだけでムキムキに?」


「いいえ。ついでに空気イスも試したわ」


 マッスルマニア!


「おかげで全身がこんな感じよ。おやつを食べても筋肉に変わるし。あまり褒められたもんじゃないわね」


「いやいや、すごいじゃん。並の男子ならブッちぎれるかも」


「女子として、それはどうなのかしら?」


 繊細な乙女! ヒザナッパなのに!

 

「少なくとも、あーしより体力はあるよ」


「ありがとう。でもスタンディングデスクは、オススメしないわよ」


「だねえ。あーし、勉強自体苦手だもん」


「脳も筋肉よ。反復練習で、だいたいのことは覚えられるわ」


 なにその謎理論!?

 脳みそ筋肉って、そういう意味じゃねえから!


「学期末テストの勉強と、マラソン大会の練習には付き合うわ。その代わり」


「なんでも言うこと聞くよー」


「この『晩年の鳥山明のイラスト』みたいなヒザを、なんとかしたいんだけど」


 気にしてた!

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