マッスルな男は好きですか?

あきこ

マッスルな男は好きですか?

「今年のXボディビル大会の優勝者は、飯束剛さん!」

 司会がそう叫ぶと大きな歓声と拍手がおこった。

 剛は深呼吸し、その歓声を十分に自分の中に取り込むと中央に進みその栄誉を享受した。


 式典が終わった後、ああ、ついにやったのだと、剛はこれまでの苦しい日々を思った。

 そして、自分の方に歩いてくる女性を見つめる。


 僕は君に今日のこの姿を見せて見返す為、今日君をここに呼んだ。


 あなたと初めて会ったのは中学2年生の時だった。

 都会から転校してきたあなたは、田舎者の俺たちの憧れの的で、俺もそんなあなたに恋する男の一人だった。


 その頃の俺は時々あなたの声に聞き耳を立てていた。

 そして、あなたが「マッスルがすき」と、そう言ったのを聞いた。

 あなたのその一言を聞いて俺は体を鍛え始めた。


 奇跡的に同じ高校に行けた俺は、更にあなたを慕い、2年で高校生ボディビル大会のベスト4に入った後、思い切ってあなたに告白した。

 その時、なんとあなたは真っ赤な顔をして

「私は、muscleではなくmussel…、ムール貝が好きだと言ったの!」

 …そう言って走り去ってしまった。


 ああ…それからの俺は…くっ…思い出すのも辛い。

 いつも女どもは俺を遠巻きに見てあざ笑っていた。

 俺は悔しくて、日本一になって見返してやるんだと頑張ったんだ。


「おめでとう、飯束君。あの…わたし、あなたに謝らなければいけないの」

 うん、うん。

「私、嘘をついてしまって」

 ん?

「高校2年の時、初めて告白されて、それで、変なダジャレみたいな誤魔化し方したんだけど・・・私、ホントはまっちょな人が大好きで」

 何ぃ?

「飯束君の事ずっと見てたの、でもあなた女の子にもてるから、私なんてもう眼中にないかもしれないんだけど・・・」

 ???

「あの・・・わ、私と付き合ってくれませんか!?」

 !!!


 俺はよく”お前の脳みそは筋肉で出来てるに違いない”と・・・そう言われる。









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