8月23日 夏休み、隣の席の女の子と母さんに会いに行きました。

翌日、俺たちは手紙の最後に書かれていた住所の場所に向かった。

家から電車に一時間ほど揺られてようやく近くまでやって来た。


「ここか。」


俺たちは駅からしばらく歩いて、母さんがいるであろう少し古びた家の前に到着した。

深く一つ深呼吸をして、「よし。」と気合を入れて俺はインターホンを鳴らした。


玄関のドアがゆっくりとスライドされ、その奥から出て来た人を見て俺は思わず呟いた。


「……母さん。」


長い間会っていなくとも俺はその人が確かに自分の母であることを確信した。


「母さん!」


俺が母さんに抱き着くと、母さんも俺の背中に手を回して来る。


「……大地。会いたかったよ。」

「俺もだよ、母さん。俺、怒ってなんかないよ。ずっと、謝りたかったんだよ。気付けなくてごめん。守ってあげられなくてごめんって。」


その言葉の後に母さんの鼻をすする音が聞こえ始める。

それから、その音が聞こえなくなるまで俺たちは抱き合った。


二人とも落ち着いて、家の中に入り机を囲んで座る。


「突然だけど、母さんに紹介したい人がいるんだ。」

「紹介したい人?」

「うん。笑わないで聞いてくれる?」

「もちろん。」


それから俺は和奏のことについて話した。

俺にしか見えない存在だが、俺の彼女であること。

学校の近くの神社、安和神社の神様であること。

彼女が今月でいなくなってしまうこと。


母さんは俺の言葉をじっと、真剣に聞いてくれた。

そして、俺が話し終わった後母さんは微笑んでいた。


「そうなのね。和奏さんがそこに。」

「うん。」

「和奏さん。手のかかる子に私がしてしまいましたが、これからも仲良くしてやってください。あなたの話をする大地はとってもキラキラしていました。それも、あなたのお陰だと思います。」


その言葉を聞く和奏はすごく嬉しそうだった。


そこからは、今まであったことを話しあったり、和奏も筆談で加わり世間話を楽しんだ。

ご飯も和奏と母さんが一緒に作ったものを食べた。

久しぶりのおふくろの味はとても体に染みる味だった。

そして、日も暮れ始めそろそろ帰る時間となってしまった。


「じゃあね、大地、和奏さん。」

「うん。」

「また、いつでも来てもいいからね。大地も、和奏さんも。」


そうして、久しぶりの母さんとの再会とそれぞれの思いのたけをぶつけ合う、とても濃い時間は終わりを告げ、俺と和奏は母さんの家を後にしたのだった。




――――――――――――



残り8日。

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