8月22日 夏休み、隣の席の女の子と〇〇が帰ってきました。
今日も今日とて、目が覚めても和奏がいない一人の朝を迎えた。
昨日と同じように和奏が作り置きしてくれた朝ご飯を冷蔵庫から取り出し、電子レンジで温めて口に運ぶ。
最近は当たり前だったが、毎日作り立ての温かいご飯を食べられることは有難いことだと改めて思い知らされる。
いくら電子レンジで温めても、作り立ての温かさには勝てないのだ。
「今日の夜まで一人…か。」
そんな風に考えていると、静かな家の中に”カラン”という音がした。
「なんの音だ?」
俺は恐る恐るゆっくりと音が鳴った方、玄関の方に行ってみるも誰かが入って来たとか言うわけではなさそうだ。
俺は一安心し、視線を地面に落とした時に床に何かが落ちていることに気が付いた。
拾い上げてみると、それはシーリングスタンプで封留めされた封筒だった。
俺はその裏側に書かれていた名前を見て、驚いた。
『
この手紙の差出人であろうこの名前の正体。それは俺の母さんだった。
住所や切手が貼られてないために郵便で届けられたわけではなさそうだ。
母さんがここに届けに来たのかもしれないと思った俺は、急いで追いかけようと玄関のドアを開けた。
そこに立っていたのは……。
「大地!?」
「和奏!?」
和奏だった。
「何で分かったの!?せっかく驚かそうと思ったのに、私が驚かされちゃったよ。」
「和奏、今誰かとすれ違ったりしなかった?」
「え?うん。したけど。」
俺はその言葉を聞いた瞬間、急いで階段を駆け下りていくがそれらしき人影は見当たらなかった。
「大地、どうしたのいきなり走り出して。」
「いや、何でもないよ。」
追いかけて来た和奏にそう答えて、俺は探すことを諦めて自分の部屋に戻った。
「さっきの人誰だったの?とっても綺麗な人だったけど。」
部屋に戻ると和奏がそう聞いてきたので、俺はさっき届いた封筒を彼女に見せた。
「九重由美子?」
「うん。俺の母さんだ。」
「うそ!?それで、中には何が入ってたの?」
「まだ、見てない。」
「早く見ないと。」
そう言って和奏は俺に封筒を渡して来る。
俺はゆっくりと封筒を開けて、中を覗くと一枚の紙が出て来た。
『大地へ
いきなりの手紙ごめんね。親戚に大地の場所を聞いて、手紙を出しました。
元気に過ごしていますか?私はあれから新しい場所で仕事をして、元気に暮らしています。
あの時大地を置いて行ってしまったことを今でも後悔しています。自分の子供の未来を奪ってしまうような、母親とやってはいけないことをしてしまった。大地が怒っていても仕方がないと思います。
でも、もしも、もう一度私と会ってく貰えるのなら会いたいです。あって、謝りたいです。』
俺は、この手紙を読み終え、今にも涙が出そうになるのを堪えながら手紙を封筒に戻した。
「大地?」
「明日、会いに行こう。母さんの所へ。……和奏も。」
「うん。」
俺たちは母さんに会いに行く準備を始めた。
「そう言えば和奏は何で早く帰って来たんだ?」
「え!?な、なんとなくだよ。なんとなく。」
「ふ~ん。」
――――――――――――
残り9日。
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