8月4日  夏休み、隣の席の女の子とプリクラを撮りました。

「ねぇ、どこ行くの?」

「着いてからのお楽しみだよ。」


俺は和奏を連れて、ある場所に向かっていた。


そんなやり取りをしながらしばらく歩き、到着したのはこの前来たゲームセンターだった。


「お楽しみって、またゲームセンター?」

「そうだよ。」

「この間思う存分遊んだでしょ?何するの?」

「今日はこれをします!」


俺が指さしたのはリア充、JK達で溢れかえる機械、プリント倶楽部略してプリクラだった。


「恋人と言ったらまずこれでしょ。この前来た時も和奏、撮りたそうに見てたから。」

「気づいてたんだ。でも、私写真には映らないよ。」

「知ってるよ。だから、これ持ってきたんだ。」


そう言って俺が取り出したのはジャケットと眼鏡、手袋だった。


「これ着ければ、和奏がいた事が分かるでしょ。それに後から落書きで付け加えたら完璧だ。」

「ありがと、大地。」

「よし、それじゃあ撮りに行こう!」


俺はそう言ってプリクラに向かう。

外で色んな設定を終わらせ中に入っていく。

傍からは1人でプリクラを撮りに来たヤバいやつのように見られていたのは気にしなかった。


中に入り、俺が持ってきた眼鏡とジャケットを身につけた和奏はいつもの制服とは一味違った色気を出していた。


色んな誘惑に耐えながら、流れてくる音声に従ってポーズを取っていく。


ピース、指ハートと、初めは難なく撮っていたが、段々と肩組み、頭ぽん、と距離が縮待っていき最後の1枚の指示を聞いて俺は固まった。


『キスをしよう!』


こんなこと要求されるなんて聞いてないよと思っていると、


「大地、こっち向いて!」


カウントダウンが始まる中、俺は和奏の方を向くいた。

その途端、俺の唇に手袋をした和奏の手の人差し指と中指が当てられる。

そしてシャッター音と共に俺に衝撃が伝わってくる。


「カップルだったらこれくらいしないとね。」


少し顔を赤らめながらそう言う俺の彼女はとても可愛かった。


それから撮った写真に落書きをした。

和奏の輪郭をえどったり、猫耳をつけたり、文字を書いたり。


2人で笑い合いながら思う存分落書きをした初めてのプリクラは最高と言っていいほどの出来だった。


「私が、写真に移る日が来るなんて思わなかったな〜。大地、ありがとね。宝物にするね。」

「喜んでもらえて嬉しいよ。ま・・・」


また撮りに来ようね、俺はそう言いかけて辞めた。


「この写真大地の家に飾っていい?」

「もちろん!額縁買わないとな。」


やったー!!と無邪気に喜ぶ顔を俺はただ見つめるだけだった。


家に帰って飾られてたプリクラを見ると、見えないはずの彼女の満面の笑みが俺には見えるような気がした。




――――――――――――――――



残り27日。

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