8月3日 夏休み、隣の席の女の子と付き合いました。
翌朝目が覚めると和奏の姿が見当たらなかった。
机の上には和奏が作ってくれたであろう朝ごはんと、その上に小さな紙が置いてあった。
『今日の20:00に教室で待ってる。』
その紙にはそれだけ書かれていた。
少し心配に思いつつも俺はその時が来るのを課題などをしながらじっと待った。
そして約束の時間。
俺は学校に忍び込み、教室の扉をゆっくりとスライドさせる。
中には俺の隣の席に座っている和奏の姿があり、彼女は手招きをして俺を隣の席に誘う。
俺は誘われた通り自分の席に座る。
「夜の学校って何だか怖いね。」
「和奏もその怖い対象なんだけどね。」
俺がそう言うと、彼女は「そうだった。」と笑いながら言った。
「大地が先生にバレて怒られないように本題に入るね。」
和奏は笑っていた顔から一変して、真剣な顔で話し始めたので、俺は息を飲んでその後に続く言葉を待つ。
「あそこに山が見えるでしょ?その山の頂上の近くに神社があるの知ってる?」
彼女がそう言って窓の外を指さす。
「もちろん知ってるよ。心願成就で有名な神社で毎年花火大会とかで賑わってるよね。」
「
「そうなの?残念だな。」
「詳しくは神社合祀って言って、別の場所の神社と合併しちゃうんだ。」
「へ〜、よく知ってるね。」
俺は彼女がどうしてこんな話をしているのかが分からなかった。
だから、他人行儀な返事しかできなかった。
「・・・だって私、安和神社の神様だもん。」
「え?」
「だからね、私も神社合祀の日、8月31日にはいなくなっちゃうの。夏休みの間だけ泊めてってのはそういう訳。」
俺はその言葉を聞いて頭が真っ白になった。
せっかく出来た友達が消えてしまう。
他人を信じてみようと、前を向こうと思わせてくれた彼女が。
「お別れまですぐだけど、それまで友達として仲良くしてね。」
そう言う和奏の綺麗な頬には一粒の水滴が流れていた。
彼女も意を決して俺にその事を話してくれたのだと理解し、それを見て決心する。
「嫌だ。友達なんて嫌だ。」
俺のその言葉を聞き和奏は驚いた表情で俺の方を見る。
「俺を、君の、、。」
俺は大きくひとつ息をつき、
「君の彼氏にしてください!!」
和奏は固まったまま動かない。
「和奏と出会って色んなものを貰った。暖かいご飯、楽しい時間、作らないと思ってた友達まで。俺は和奏に会って救われたんだ。だから今度は俺があげる番。もう、君にそんな涙は流させない。ずっと一緒にいてあげる。だから、俺と付き合ってください。」
俺は思いを全て言葉にし、頭を下げる。
教室の時計の秒針がカチカチと一定のリズムで鳴らす音だけが響く。
そして和奏が鼻をすすりながら、聞いてくる。
「あと1ヶ月も無いんだよ?」
「オバケだよ?」
「触れないんだよ?」
俺はその問いに、うん、大丈夫、と返答し続ける。
そして、
「しょうが無い、大地のその願い神様の私が叶えてあげよう。」
俺が諦めないと思い受け入れたのか、それとも、もしかして......。
何はともあれ、今日から俺は隣の席の女の子とカップルになったのだった。
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